ジェフ・ベゾスの株主書簡に学ぶ「高い基準」に関する5つの極意

Photo by Paul Morigi/Getty Images

ビジネス界のリーダーは、自分の能力内で物事を完結させるのが一般的だ。しかし、アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は違う。ベゾスは同社創業から20年間、圧倒的に有利な専門知識を持たないさまざまな市場に繰り返し挑戦してきた。

ベゾスは、先日発表した株主向け年次書簡でも期待を裏切らなかった。彼は書簡で、同社が数々の大きな節目を達成したと説明。有料プライム会員数は世界で1億人に達し、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)事業では年間売り上げのランレートが200億ドル(約2兆1800億円)に、ハードウエア機器の売り上げは過去最高を記録した。

アマゾンの株主書簡での大きなテーマは、「高い基準」だ。さらに書簡からは、ベゾスの経営手法、さらには人生観も垣間見られる。ベゾスは同書簡で、同社が経験から学んだ高い水準に関する4つの信条、「教示可能」「領域固有」「認識」「視野」を紹介している。

教示可能:「高い基準は感染する」

ベゾスによると、高い基準は人に教えることができるし、感染力がある。優秀な人材の働く環境を作れば、他の優秀な人材が集まってくる。ベゾスは書簡の中で「高い基準を持つチームに加わった新メンバーは、その環境にすぐに適応する。その逆も同じで、低い基準はすぐにまん延する」と述べた。長い時間を一緒に過ごす5人の人間を観察すれば自分の性格が分かる、と言われることが多い。付き合う人は慎重に選ぶこと。人が平均値に戻ろうとする力は、自分ではコントロールできないほど強力だ。

領域固有:「弱みとなる盲点があっても良い」

高い基準は実は、特定の領域に固有のものだ。ある特定の分野で高い基準やパフォーマンスを発揮していたとしても、それが他分野にも応用できるとは限らない。ベゾスの功績を見ているとそうではないように思えるが、彼自身も次のように述べている。「私はアマゾン起業時、投資や顧客対応、(幸運なことに)採用に関しては高い基準を持っていた。しかし、解決した問題を再び繰り返さない方法や根本的な不具合の解決法、プロセスの検査法などオペレーションプロセスについては高い基準を持ち合わせていなかったため、そうした全ての課題について学び、高い基準を持つ必要があった」

自分の盲点を認めるのは、謙虚さを持つことだ。これは、自分がまだ客観的な成功を収めていない段階では、いっそう難しい。しかしベゾスの例が明らかに示しているように、長期的には報われる行動だ。
次ページ > 「認識」と「視野」、そして隠された第5の信条

編集=遠藤宗生

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事