さて、では現在の医学部の学費はどれくらい安くなっているのだろうか。6年間の学費総額は、文科省のホームページなどで公表されているが、各予備校のウェブサイトなどでも調べることができる。
以下のランキング表は、2017年度入学者のデータをもとに、筆者が作成した日本の私立大学医学部全31校32コースの学費、偏差値などを示した一覧表だ(学費や志願者数、入学者数などの客観的な数字については、文部科学省の学校基本調査のデータから、偏差値や入試難易度については、指導者の実感に一番近い河合塾のデータから、それぞれ引用した)。
この表は学費の安い順に並んでいる。数値については、なるべく正確を期するようにしたが、ご自身で利用される場合は、必ず各大学のWebサイトなどに直接あたるようにしてほしい。
特殊な法律によって設立された自治医科大学(1位)は、卒業後9年間、各地域の知事の指定に基づき、へき地や過疎地域での勤務を果たすと、すべての修学金が免除となる。つまり、学費は実質無償である。
防衛省管轄でもある防衛医科大学校は、私立ではないのでランキングには載せていない。もちろん、防衛医大生は公務員として就学するため、学費はかからず、給料までもらえる。
2011年の東日本大震災を受けた特別措置で、2016年に約40年ぶりの医学部新規設置となった東北医科薬科大学は、100名の定員の半数以上(55名)に修学資金枠(2位)が用意されている。その枠で合格すると、国公立大学医学部と同等の学費で修学できる。
成績優秀者に対し、大幅な修学資金や学費減免が実施されている大学は、他にも、杏林大学(東京都枠10名程度)などいくつかあるが、東北医科薬科大学は、修学金枠が半数以上のため、ランキングに加えた。
将来、東北地方での勤務が可能な学生には、大変お勧めの医学部だ。
産業医科大学(3位)は、非常に学費が安いが、自治医大と同様に卒業後の縛りがある。産業医としての9年間の勤務が義務付けられているのだ。産業医としての勤務を果たさなかった場合は、一般の私立大学と同等の学費が請求されることになる。
国家戦略特区に指定された千葉県成田市の国際医療福祉大学医学部(4位)は、2017年に開学したばかりの日本で一番新しい医学部である。自治医大等の特殊な医学部を除き、現在、一番学費の安い私立大学であり、6年間の総額は2000万円足らずである。
アジアからの留学生を大量に受け入れ、授業の多くが英語で実施されている。偏差値65となっており、入試難易度は★二つレベルだが、筆者の指導上の印象からすると、実際の難度はもっと高いかもしれない。
次に安い順天堂大学(5位)は、2008年に他大学に先駆けて900万円近くの値下げを断行して有名になった。その結果、多くの受験生を集め、偏差値も大きく上昇させた。
天皇陛下の心臓手術を担当した心臓外科医・天野篤教授など、優秀な教授陣の評判も高く、今では、私立医大「御三家」(慶應大、東京慈恵医科大、日本医科大)と並ぶ、「新御三家」(順天堂大、昭和大、東邦大:ただし、東邦大の代わりに東京医科や日本大学が入るなど諸説あり)の筆頭に数えられ、慶應に次ぐ人気を誇っている。キャンパス・大学病院が都心(御茶ノ水駅近く)にあることも魅力の一つである。