グーグルの先進的イノベーション部門、グーグルXの最高ビジネス責任者を務める元エンジニアのモー・ガウダットも、私のように幸せにこだわりを持っている。ガウダットは12年間かけて幸せの科学を研究した。それが試される時が来たのは、息子のアリを防げたはずの医療ミスで亡くしたときだ。
ガウダットは、幸福の追求と自己の研究の成果を著書『Solve for Happy(幸せを解く)』で明らかにしている。同書は、喜びのある人生を追求する上で私が直面した多くの疑問に答えてくれた。
私はポジティブ心理学の父であるマーティン・セリグマン博士や、自己啓発コーチのトニー・ロビンズ、喜びにあふれた起業家のリチャード・ブランソン、そしてスティーブン・ピンカーのような認知心理学者に話を聞いたことがある。ピンカーは、現代社会の全てについて楽観や感謝、幸せを感じるべきだと考える人物だ。
現在私は、以前よりもずっと上手に自分を幸せな精神状態に置くことができ、ほぼ即座に気持ちの切り替えができるようになったが、この段階に至るまでには何年もかかった。過去には「ポジティブさを維持するのになぜ努力が必要なのか?」とよく考えたものだが、ガウダットによると、これは至って普通のことのようだ。
「心配するのは脳の初期設定」とガウダットは書いている。「さまざまな研究から、人間はポジティブ思考よりもネガティブ思考(自己批判、悲観、恐怖心)になりがちなことが分かっている。大半の人は、ほとんどの時間をネガティブな状態で過ごしている」
悲観的になりがちな傾向は、人間の原始的な脳の名残だ。ネガティブ思考はかつて進化に役立ったものの、現代ではむしろコンピューターのバグのようになった。ガウダットによると、人間の脳は脅威を探すようにできており、その唯一の目的は「生存」だ。私たちの祖先があまりに楽観的だったら、人類は生き残らなかっただろう。