ハインツは、バフェットからの多額の資金援助を受けて買収された。3Gキャピタルはその後、クラフトを買収し、2015年にハインツと経営統合させた。統合された事業は、クラフト・ハインツとして株式を公開。株式の27%をバークシャー・ハサウェイ、24%を3Gが所有している。
3Gの経営モデルは、「ステロイドを打ったジャック・ウェルチ」と言えるだろう。全従業員は日々、自分の存在価値を示さなければならない。昇進のスピードは早く、個人の功績によって決まるが、成績の悪い社員は早々に解雇される。予算はゼロベースで、1年以下の周期で容赦なく評価され、価値がないと判断された経費は切り落とされる。レバレッジと過度な効率性を基盤としたビジネスモデルにより、3Gは未公開株式投資会社として史上最大の成功を収めてきた。
クラフトとハインツは、統合から2年未満の間に労働力が20%縮小し、諸経費は40%削減された。その一方で市場価値は630億ドル(約6兆6000億円)から1050億ドル(約11兆円)へと増加。3Gが次に買収する会社をめぐる臆測が飛び交うようになり、次はコカコーラなどの食品企業ではとの見方も出ていた。
だがその答えは、想像を絶するほど野心的だった。3Gとバフェットは、ケチャップのハインツとマヨネーズのヘルマンズという2ブランドを統合すべく、ユニリーバに1430億ドル(約15兆円)で買収を提案。これは史上2位の買収金額だったが、ユニリーバに拒否され、提案は撤回された。
これにより、米企業の役員会には暗い影が投げ掛けられている。最高経営責任者(CEO)たちは、「野蛮な来訪者」から自社や職を守ろうと慌てている。映画『ウォール街』の強欲な投資家、ゴードン・ゲッコーの精神は健在だ。