発表された新たな9.7インチ版iPadは、今まで高価格帯のiPad Proでしか使えなかったスタイラスペンに対応する。アップルは昨年、低価格帯タブレット機器の教育機関向け販売価格を、消費者価格より30ドル(約3200円)低い299ドル(約3万2000円)に値下げしている。
また同社は、99ドル(約1万1000円)で販売している純正品の代用として使用できるスタイラスペンを、スイスのコンピューター周辺機器企業ロジテックが49ドル(約5200円)で発売することも発表した。
2012年以降、K-12(幼稚園から高校までの13年間)教育機関の園児・児童・生徒向け教育ハードウエア市場に占めるアップルのシェアは減少。同社を含むテック企業に市場調査を提供する英企業フューチャーソース・コンサルティングの報告書によると、米国のK-12教育機関に販売された全モバイルコンピューティング機器に占めるアップルのシェアは2012年には52%だったが、昨年はわずか15%だった。
アップル製品に代わり主流となったのはサムスン電子やエイサー(Acer)などのメーカーが製造する「クロームブック」で、昨年の市場シェアは58%だった。ウィンドウズ機器は22%を占め、2位だった。同報告書によると、米国の教育機関が2017年に情報技術(IT)製品(ハードウエア、ソフトウエア、ITサービスなどを含む)に費やした金額は、総額180億ドル(約1兆9000億円)に上った。
なぜアップルの人気がこれほど落ち込んだのか? 理由は4つある。価格が競合企業の2倍以上であること、電池があまり持たないこと、教師が作文の指導に必須だと考えるキーボードが付いていないこと、アップルのコンピューティング環境がクラウド基盤でないことだ。
一方、クラウド基盤のクロームブックを使う生徒は、どの機器を使っても自分の学習素材にアクセスすることができ、管理者は一つのコンピューターのダッシュボードから簡単にシステム全体の変更を適用できる。また、クロームブックは最安で149ドル(約1万6000円)と低価格だ。
アップルは先述のシカゴのイベントで、新たな教育アプリケーションをいくつか発表した。その一つは「スクールワーク(Schoolwork)」と呼ばれ、教師が生徒にメモやPDF、URLを含むデジタル配布物を渡せるようにするソフトだ。
同ソフトの利点の一つはプライバシーで、生徒のデータを見ることができるのは教師のみとなる。しかし、グーグルも生徒情報のプライバシー保護を約束しており、アップルのシステムの方が安全かどうかは不明だ。スクールワークは6月にリリース予定。
また、アップルのグレッグ・ジョズウィアック副社長(マーケティング担当)は、「スマート・アノテーション(Smart Annotation)」と呼ばれる新ツールを発表。生徒がメモを取っている間に教師が採点することを可能にするもので、同様の機能を提供する人気ツール「グーグルドキュメント」に真っ向から挑戦する形だ。