バックパッカー世代が築く「回し車のハムスターにならない人生」

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現代の経済では、一昔前の世代が当たり前に享受していたインセンティブが労働者に与えられなくなった。自分の全てを捧げても、着実に昇進を重ねられる安定した企業に入れる保証はない。

こうした状況の中、普通のキャリアを捨て、数年(必要であれば数十年)をかけて遠い地へと旅し、ハムスターの回し車のような生活を超えた先に何かを見つけようとする人が増えている。グローバル化の時代に育った世代は、特にこの傾向が強い。

米誌アトランティックが2014年に掲載した記事には次のようにある。「ミレニアル世代は(…)可能な限り海外を旅行したいと思う人が前の世代よりも多く、その差は23%だ。(…)若い旅行者は、『太陽と海が輝く砂浜での昔ながらの休日』に前世代ほど興味がない。『メジャーな玄関都市』よりも辺ぴな土地を探索し、ホテルよりもホステルに宿泊し、2週間の小旅行ではなく長期のバックパッキングを選択している」

こうしたバックパッカーたちは、新たなグローバル経済の開拓者となっている。英旅行保険会社ホリデーセーフ(Holidaysafe)が実施した調査などからは、平均的なバックパッカーの年齢が上昇していることが分かっている。従来的なキャリアパスを一旦停止したり、辞めたりした人がバックパッカーになるケースが増えているのだ。

私も中年だが、昨年11月にエグゼクティブレベルの仕事を辞めた。少なくとも一時的に、こうしたバックパッカーの仲間入りをしようと考えたからだ。私は近年、世界のさまざまな場所でこうしたバックパッカーに多く出会った。直近では、フィリピン西端の辺ぴな漁村で数週間を過ごし、こうした旅人から話を聞いた。

そのうちの一人はミレニアル世代の英国人男性で、英国を去ってからいかに人生が一変したかを次のように語ってくれた。

「良い大学を卒業したが、就けたのは製造業の最低賃金の仕事だけ。最後には『もうたくさん』と思い、英語教師になるため中国に来た。中国は、国民が英語を話せるようにするのに必死。今では食事と部屋に加えて毎月貯金できるような良い給料をもらえているので、前よりはるかに良い生活を送っている。こうした機会は、中国などアジア諸国の至るところで見つかる」
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編集=遠藤宗生

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