ビジネス

2018.04.12

60名の組織を一枚岩に変貌させた「価値観の共有」と「ライバル意識」

天沼聰 エアークローゼット代表取締役社長兼CEO(右)と石川桂太 社長室長兼執行役員CSO

「時空を超える、自分を超える 異次元のワークスタイル」と題して“働き方”を特集したフォーブス ジャパン5月号(3月24日発売)。成長著しいスタートアップはいかにして従業員のモチベーションを高め、「組織の成長」を実現したのか。


成長著しいスタートアップの前に立ちはだかるのが「50人・100人の壁」と言われる成長の壁だ。事業の成長に組織の成長が追いつかず、価値観のズレやコミュニケーションの希薄化を引き起こしてしまう。プロのスタイリストが選ぶ洋服を定額制でレンタルできるオンラインファッションレンタルサービス「airCloset」などを手がけるエアークローゼットも成長の壁に頭を悩ませつつあった。壁を突破し、スピード感を持って成長を続けていくためにはどうすればいいか。

代表取締役社長兼CEOの天沼聰が取り組んだのが、組織状態の数値化だった。同社は社員へのアンケートを通じて、組織状態を可視化するサービス「モチベーションクラウド」を活用。その結果、組織の状態を偏差値で示した「エンゲージメントスコア」の全社結果は74.1という極めて高い数字が出た。入試なら、東京大学に合格できる水準だ。

だが、天沼は成長を加速させるためには、組織のパフォーマンスをさらに引き上げることが必要だと考えた。「モチベーションクラウド」のサーベイ結果の中から天沼が見出したのは、事業ビジョンや企業理念の高い浸透度が表現されているものの、「部門間連携」に代表されるいわゆる「横の連携」に関するメンバーの期待度と満足度に乖離があるという事実であった。

社員数は1年前と比較して2倍の約60名に──天沼は「確かに人数が増えたことで、輸血量が過多の状態になっていた」と振り返る。同社は外部パートナーとのやり取りも多く、情報が担当者のもとで留まることも増えていた。

「横の連携が取れなければ、組織のパフォーマンスが落ちてしまう。情報の透明性を高め、部門間の連携を強化することを決めました」

この変革の先陣を切り、課題解決に取り組むことになったのが社長室。社長室長兼執行役員CSO石川桂太はこう語る。

「社長直下の部署である『社長室』が変われば、会社全体が変わっていく。浮き彫りになった部門間連携の課題を解決するために、社長室では採用と所属メンバーとのコミュニケーションに力を入れていくことにしました」

そもそも「どんな人材を社長室に採用するか」というところから、変革は始まった。徹底したのが企業文化とのマッチングだ。クレドである「9 Hearts」への共感性が高いか、それを体現できる人物かどうか。スキル面では採用基準を満たしながらも、「9 Hearts」とのミスマッチがあり、採用を見送った例もあったという。


9 Hearts
お客様の感動が第一
BE POSITIVE, BE ACTIVE
スピード感を持ち、動く
発信する個であれ
シェアをし、チームも自己も成長する
失敗を恐れるな
BE CREATIVE, GET “WOW”
私たちに障害はない
全力で楽しむ!


また、3か月に1回のグループMTG、週1回の1on1も実施。結果として生まれたのは、お互い切磋琢磨するライバル意識だ。

社長室自体のエンゲージメントスコアも最新のサーベイでは94.6に向上。チーム全体のモチベーションが向上したことで、ファッションスタイリングEC「pickss」など新規事業のスムーズな立ち上がりなどにも貢献している。


石川を中心とした社長室のメンバーたち。半年間でチームワークと緩やかな競争意識が醸成され、モチベーションが向上。



エアークローゼット◎2014年7月に創業。定額制ファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」などを展開している。同社の社長室は2017年6月に「エンゲージメントサーベイ」を実施。当時のエンゲージメントスコアは88.3だったが、わずか半年で99.6に。6.3ポイントもスコアをアップさせている。

文=大矢幸世 写真=若原瑞昌

この記事は 「Forbes JAPAN 時空を超える、自分を超える異次元のワークスタイル」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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