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2018.02.23 07:00

住友商事社長が語る、これからの「商社」のあり方

住友商事 代表取締役社長 中村邦晴

「商社には、そろそろ別の形容詞が必要です」

商社はモノを仲介するだけのブローカー──。そう呼ばれた時代と決別するかのように、住友商事の中村邦晴は力強く言い切った。

2015年3月期、住商は資源価格下落の影響で巨額の減損を出して、16年ぶりの赤字転落となった。そこから見事に回復して、18年3月期は純利益2800億円と過去最高益を見込む。今回の復活劇は資源価格が戻ってきたことが大きいといわれる。ただ、そこだけに注目すると本質的な変化を見逃してしまう。

「利益には、資産を売ることで得られる一過性の利益と、日々の積み重ねで得られる利益の2つがあります。会社を継続的かつ安定的に成長させるには、後者の“稼ぐ力”が大事。それがここにきて身についてきた」

稼ぐ力の一つが、利益の約3割を稼ぐ生活・メディア関連セグメント(18年3月期見通し)。特にケーブルテレビ事業のJ:COMは貢献が大きい。

いまさらケーブルテレビと軽視してはいけない。J:COMの契約数は534万世帯。1世帯2人とすると、1000万人以上とアクセスできる─大プラットフォームだ。J:COMはこれを活用して、インターネットや固定電話のほか、15年にモバイル、16年に電力、17年にガスと、多角的にサービスを展開。住商はこのプラットフォームを活用し、今後は保険やヘルスケアなど、さらにサービスを拡充していきたいと考えている。

「これまで商社は、金属なら金属、輸送機なら輸送機といった担当部門の縦割りが普通でした。しかし、J:COMで電力を売り始めたように今後は境目がなくなっていく。さまざまな事業が掛け合わさってビジネスが広がっていくとき、プラットフォームがあるのは大きな強みです」

社長就任前には「再発見」があった。住友といえば「浮利を追わず」などの事業精神が有名だが、中村は「住商とは何か」を問い続けていくうちに、「自利利他公私一如」というフレーズを見つけた。昔から住友に伝わる言葉だが、なぜか住商社員たちにはあまり知られていない。人の利益、公共の利益になる事業をするという考え方だ。中村は就任直後からこの言葉を好んで引用した。

「住友がなぜ400年続いてきたのか。それは会社だけでなく、従業員、パートナー、社会や国家などすべてのステークホルダーに真摯に向き合ってきたから。私たちが社会を支えようという姿勢でいたら、しんどいときに逆に社会から支えてもらって事業を続けていくことができたのです」
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文=村上 敬 写真=帆足宗洋

この記事は 「Forbes JAPAN 次代の経済圏を作る革命児」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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