途上国の女性起業家への融資、モバイルがキーに
途上国の女性起業家への融資に関し、いくつかの大きな課題があります。
第一に、ネットワーク(人脈)の欠如であり、これは途上国における、女性特有の問題です。女性は一般的に、男性と比較して家にいることが多いという特徴があります。また、モバイル端末を持たない人も多く、人脈が少ないため、支援することが困難です。そのため、女性は法的なアドバイス、経理上のアドバイスなどを得にくく、会社を設立するために必要な計画が立てにくいのです。
第二に、資産所有に関する規制問題です。途上国の中には、女性に、家や土地といった資産を持つ権利が与えられていない国がいくつかあります。しかし、ほとんどの場合、銀行が融資をするときには不動産担保が必要となるのです。これを解決するため、私たちは、途上国政府に働きかけ、女性が資産を持てるようにしたり、銀行に対して、宝石などの動産担保によって、または、担保なしでも融資を可能にするよう働きかけています。
さらに、融資以外でも、そもそも女性は育児で忙しく、ビジネスに割ける時間が少ないという問題があり、これには企業が保育支援などを提供していく必要があります。また、女性に対する家庭内暴力などの問題もあります。融資以外にも、女性が起業をする上で、課題はまだまだたくさんあるのです。
このような現状を鑑み、私たちは、新興市場において、女性への融資を進めるための一つのポイントは、モバイル端末だと思っています。モバイルがあれば、人里離れた場所に住んでいる女性にも融資そして起業の機会が生まれます。しかし、いまだ世界で17億人の女性がモバイル端末を持っていません。今後どうすれば、彼女たちがモバイル・テクノロジーを使っていけるようになるかについて私たちは挑戦していく必要があります。
民間セクターこそ、キー・ドライバー(推進力)
IFCは、もっぱら民間ビジネスの方をお客さまとしており、私たちのサービスはこうしたお客さまを通じて世の中に供給されていきます。政府としては、こうした民間ビジネスが最大限の役割を果たせるよう規制改革を行い、ビジネスに女性を受け入れていく支援をすべきでしょう。たとえば、先に述べた担保の問題の解決や、企業による出産休暇や保育支援を義務付けることなどです。男女平等にとって、民間セクターは重要な役割を果たすと思います。女性を雇用したり、女性従業員に、管理職になるためのトレーニングをしたり、女性ロールモデルを作ったり、といった大きな役割があります。
たとえば、あるインドの会社では女性社員がいませんでした。IFCはアドバイスをしたのです。それは、実は「女性用のトイレを作る」という簡単なことでした。しかし、これが、保育施設を作るといった複雑なことよりも、女性の従業員を雇う際に大きなポイントとなったのです。
あるデータによれば、女性役員がいる会社はより速く成長し、利益も多い。またより多くの女性を雇用する傾向があります。女性は事業で成功してお金を得ると、子どもの教育や家族へお金を使います。子どもは良いコミュニティーで育つことができ、より良い教育を受けられるようになります。女性起業家、主婦、女性役員、企業で働く女性を支援することは、世の中の物事をより良くすることにつながるのです。
ネナ・ストイコビッチ◎国際金融公社(International Finance Corporation、IFC)副総裁。Economic Institute of Belgradeでコンサルタントとして働いた後、1995年にIFCにインベストメント・オフィサーとして入社。これまで、世界の気候変動やジェンダー、紛争・脆弱地域に関する問題の解決に携わってきた。ロンドン・ビジネススクールMBA。