最近、会社の調査をしているとあることを感じる。ゆっくりだが経営者の代替わりが進んでいるのだ。団塊の世代も60代後半〜70代になり、大企業や中堅企業でも社長から会長、会長から顧問、そして引退……。それが用意ドンで一気に行われるわけでもなく、全国そこかしこで時間をかけながら少しずつ世代交代している。
もちろん、団塊の世代=悪とかそういう単純な議論ではない。世代的に人口が多く、かつ金融資産も大きいあるグループの人たちが引退をしていくことは、良し悪しにかかわらず、何らかの影響を与えるのは間違いない。団塊の世代がビジネスリーダーから退出することが日本にとってよい結果になるかどうかは未来にならないとわからないだろう。
経営者の交代は会社が変わる機会でもある。最近は団塊の世代の退出とポスト団塊世代の社長の交代が始まっており、それをきっかけに会社が変わり始めたというケースをしばしば見るようになった。
そこで働いている会社の社員には大変に失礼な言い方だが、日本には“ゾンビ”みたいな会社が多い。潰れるほど業績は悪くはないが、社員に覇気がなく、株価も長期的に低迷している。生ける屍のような会社が日本の株式市場にはたくさんある。しかし一部ではあるものの、そのような会社も少しずつ変わり始めている。
きっかけはやはり、社長交代であることが多いが、特に際立った改革者が出てきたというわけでもなく、長く君臨していた長老の引退で、多少の改革の機運が出てきたという程度のことが多い。さらにコーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードなど企業統治の改革の動きが市場サイドから求められつつあるのも、多少なりとも経営者の意識改革を促進しているようだ。まだまだゆっくりした動きではあるが。
そのような中で無駄な贅肉がついている状態で企業改革を行うと、それほど優秀な経営者でなくても成果が出やすい。触るだけで水があふれる濡れ雑巾のようなものだ。例えば、1部署に1台ずつコピー機があるような状態を3部署に1台に減らすだけで、大きなコストダウンになり利益が出てくる。
ゾンビ企業の“非ゾンビ化”
売り上げ5000億円程度で営業利益が50億円程度の会社は日本の上場企業では少なくない。経営状況が厳しいから利益率が低いのではなく、競争状況が緩い寡占状態なので、むしろ利益を出すつもりがなくなっているような会社すら見受けられる。そのような会社ではそれほど辣腕を振るわなくても、基本に忠実に合理化をすれば、あっという間に利益が3倍程度になることもある。
事業ポートフォリオを見直して経費を少し引き締めれば、それだけで利益が出たりする。例えば4500億円の売り上げで150億円の営業利益の会社に変貌したというケースが多く見られるようになっている。その場合は営業利益が3倍になったので株価も3倍になるかというと、それどころか、鳴かず飛ばずの会社だと過小評価されていたのが少し適正に評価されるだけで、株価が4〜5倍になることさえある。PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が上昇するのである。
投資家的には、そのようなゾンビ企業が非ゾンビ企業になるところは株価の変化率としてはじつにおいしいところで、誰もが認める優良企業への投資以上のリターンを得られることが少なくない。