好奇心を大切にする教育とは如何なるものか? 一つの解になるかも知れないと思われる小学校を見学してみた。
学びは常に社会との接点に
Cold Spring Schoolの質素なキャンパスは、イエール大学から車で10分ほどの市街地にあった。1982年に創設されて以来、36年間で3代しか校長先生が変わっていないというから、一人の校長が平均して10年以上生徒たちの教育と向き合っている計算になる。今回は3代目の校長であるArati Pandit女史に話を聞くことができた。Pandit女史はボストンの著名なプログレッシブスクール、Advent Schoolからヘッドハントされて6年前にここへ移籍して来たという。
なぜか。その理由を彼女は、「ここでは、理事会も教職員も保護者も、学校のコミュニティ全体が、生徒の好奇心を最大限に引き出すことにコミットしている。毎年、学年ごとに生徒たちが相談して学びのテーマを決め、全ての教科がそのテーマに沿って構成されている。究極のstudent-centered learningがここにあるから」だと教えてくれた。
「幼稚園から小学校6年生まで145名程度の少人数制で、幼稚園から1年生、2-3年生、4-5年生が混合で構成されており(6年生だけは中学進学のため単独編成)、年齢の違う生徒たちが互いの面倒を見合うことが人格形成にも大きく寄与している。それも魅力の一つです」
生徒の好奇心ファースト
生徒たちが相談して学びの題材を決める、と一口に言っても、日本の学校教育に慣れた私たちにはすぐに想像がしにくい。具体的にはどういうことをやっているのか?
例えば今年の2-3年生は、「海洋環境」をテーマに決めた。その上で、理科では、海水を構成する物質から海洋に住む生物まで幅広く学ぶ。社会科では、世界各国が海の資源をどう活用しているか、あるいは国際社会が海洋汚染にどう対応しているかなどを。英語では、海を題材にした純文学の中から教師が生徒のレベルに合わせて複数の推薦図書を選び、図画工作では、海を描く子どももいればグループで製作をすることもある、という具合だ。
しかし、確かに生徒たちの好奇心に沿った学習であり、聞こえもいいが、それを繰り返した場合に、教えられる内容に制約が出てこないのだろうか? 果たして小学校卒業時までに必要な知識やエリアを全てカバーすることを担保できるのか、疑問に残る。
そう純粋にぶつけてみると「それは定期的にアセスメントをやっているから心配ない」とPandit女史。さらには、Connecticut Association for Independent Schoolsという第三者機関から認証を受けているため、カリキュラムの範囲や内容、教える教員の質などは客観的なチェックも行われているという。なるほど、それであれば少し安心かも知れない。