だが新卒生が期待する給与額は、学位の種類や住む場所によって変わる。学生が期待する年収額を専攻別・国別に示した調査結果が先日、人材コンサルティング企業のユニバーサム・グローバル(Universum Global)によって発表された。
この調査は、29か国の経営学専攻・STEM(科学、技術、工学、数学)分野専攻の学生53万3351人に対し、卒業後初めて就く仕事での希望年収を尋ねたもので、同社の年次報告書「Cost of Talent(人材のコスト)」の一環として実施された。
ユニバーサムの南北米大陸担当マネジングディレクター、ヨンナ・ショーバルは「現在、世界の人材コストは各国の生活費とほぼ一致しているため、市場によって人材コストが変化するのもつじつまが合う」と話す。「最も求められる人材は、自分の市場価値を理解している。今年は、STEM分野専攻と経営学分野専攻の学生の間で、雇用の不足状況に応じた市場ごとの興味深い違いが見られた」
経営・STEM分野の学位を持つ学生の期待年収が最も高かった国は、昨年に引き続きスイスだった。経営学分野の学生は年収7万4400ドル(約810万円)、STEM分野の学生は年収7万5300ドル(約820万円)を期待していた。世界銀行の2016年の情報によると、スイスの1人当たりの国内総生産(GDP)は世界2位で、フォーブスのまとめた「ビジネスに最適な国」ランキングでは10位にランクインした。
2位はデンマークで、卒業すぐの期待年収が経営学専攻学生で6万1500ドル(約670万円)、STEM分野専攻学生で6万5000ドル(約710万円)だった。世銀によるとデンマークの1人当たりのGDPは世界10位で、「ビジネスに最適な国」ランキングでは7位だった。
3位には米国がランクイン。期待年収は経営学専攻で5万6000ドル(約610万円)、STEM分野専攻で5万9500ドル(約650万円)だった。米国の1人当たりのGDPは世界8位。
学生の間には全体として、STEM分野の学位は高収入につながるとの期待がある。ユニバーサムのジョナス・バーク最高マーケティング責任者(CMO)は「過去2年の間、ほぼ全ての業界でSTEM分野の人材を積極的に採用していることが大きく伝えられてきた」と話す。「銀行・金融など、従来経営学出身の人材が主流だった業界でさえ、IT業界との間でSTEM分野の人材の争奪戦を繰り広げようとしている」
ユニバーサムの調査結果を性別で見ると、経営学・STEMの両分野で、男性の学生の方が平均として、女性より高い給与を期待していることが分かった。男女間の給与の期待値の差が最も小さかったのは、マレーシア、スウェーデン、カナダで、差が最も開いたのはロシア、インド、スペインだった。
学生の期待する給与額が最も低かった国は、旧ソ連構成国のカザフスタンだ。同国経済は炭化水素と鉱物資源に大きく依存しているため、商品価格の下落の影響を受けやすい。投資家らは、腐敗と官僚主義に関する懸念からカザフスタンでのビジネス展開に懐疑的だ。
期待年収が2番目に低かったのは、インドネシアだった。同国は高い失業率に苦しんでおり、不十分なインフラや腐敗、複雑な規制環境が投資家を遠ざける原因となっている。