とはいえ、日本でも、真の意味でのスタートアップとして将来性のある企業もある。2016年にわれわれのプログラムに参加した「SORA」だ。そのときは2人の会社だったが、いまの社員は10人ほど。昨年11月に渋谷で行われた「テッククランチ東京」のビジネスプランコンテストでは、最優秀に選ばれている。
SORAは、ホテルや旅館の予約履歴や予約状況を人工知能で解析し、最適な宿泊料金を設定、宿泊サイトに掲載するというサービス。料金設定はこれまで、長年の勘と経験に頼りながら手作業でおこなわれており、その結果、機会損失を生んでいるという問題があった。それを、最先端のテクノロジーとデータを活用した手法に置き換えたのだ。国内には、ホテルと旅館は約5万軒、部屋数は約150万室あり、市場規模も魅力的だ。
同社の松村大貴CEOは、「学んで、考えて、伝えるのが好き」だと自己紹介するが、彼がプログラムを通じて学んだのは圧倒的なスピード感だという。初日に500 Startupsのメンターから「あなたはCEOでしょ、何故ここにいるのですか? 早く外に出てホテルに営業してきなさい。たとえ上手くいかなくても自分で行かないと学べないこともあります」というアドバイスを受けた。
松村氏はそれをきっかけに時間の使い方を大きく変えた。自らセールスをしたことのないCEOでは、どう営業するのか、営業チームに誰を雇ったらいいのか判らないということを、思い知らされたという。
2017年10月、「SORA」は、500 Startups Japan、大和スタートアップ支援投資事業有限責任組合、日本政策金融公庫、および複数のエンジェル投資家より、8000万円の資金調達に成功した。スタートアップが少ない日本でも、このような「VC fundable companies」は存在する。シリコンバレーのVCとの相性も良い。
話は変わるが、神戸市はアフリカのルワンダ共和国との経済交流に積極的に取り組んでいる。ルワンダと聞いて、ITやスタートアップをイメージできる日本人はほとんどいないと思うが、日本国内に少ないシリコンバレーの流れに沿ったな起業家やスタートアップが存在している。
私とともにルワンダを訪問したモバイルゲーム会社のCEOは、現地のスタートアップのピッチに驚愕した。エンジェル投資家でもある彼の目に、ビジネスモデルが明確、プロトタイプもしっかりと動いていると映ったのだ。次回は、「神戸がなぜルワンダ?」というイシューについてとりあげたい。