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2018.01.30 12:30

サラリーマンの働き方もプロ化する

Pressmaster / shutterstock.com


企業と従業員が親子から男女の関係へ
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──働き方改革では、従業員の企業への愛着を高める「エンゲージメント」が重要だと言われています。日本でエンゲージメントを高めるにはどうすればいいのでしょうか。

英語のエンゲージメントには婚約の意味もあります。男女の関係です。日本では、企業は社員が親子関係になっていることが多い。縦を横に変えないとエンゲージメントの関係になりません。横の関係では、企業も従業員に対してコミットしないといけない。従業員もどう企業にコミットするのか、ということが問われる。婚約なので破棄もできます。親子関係は破棄もできませんね。戦後培ってきた企業カルチャーをどうやって変えるか、意識の問題が大きい。

年齢による上下関係もあります。私は野球をやっていましたが、野球界は学年で序列があって、何年の世代かというのを必ずチェックして、呼び捨てにするか、敬語を使うかを決める。それが染み付いています。しかし、プロスポーツの業界や芸能界は、敬語にはうるさいかもしれませんが、完全に実力主義です。
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プロフェッショナルな世界になればなるほど、男女の関係になると思います。今、サラリーマンの世界がプロフェッショナル化していますので、そうせざるを得ないでしょう。

──なぜサラリーマンのプロフェッショナル化が進むのでしょうか。

日本は量産型の製造業を発展させました。大量生産では生産性を定数にしないといけない。変なものを作ってはいけないので、同じスペックを同じように作る能力が重要になる。しかし、日本の製造業もビジネスモデルがサービス業になってきました。サービス業は人の生産性が完全に変数で、人によって生産性が大きく異なる。そうすると個人間の給与の差も大きくなる。グーグルなどの世界有数のIT企業では、100億円稼ぐ人もいれば、1千万円の人もいて、ぶれ幅が大きい。プロフェッショナルの世界はそうです。

欧米は1980年代から産業構造を変革し、製造業で食っていくのを早期に諦めた。産業のニーズがあってHRテックが進歩しました。

──プロ化が進むと、働き方はどう変わりますか。

人間の集中力が持続するのは1日4時間ほどだと言われています。4時間だけ1日思いっきり仕事をして、あとの事務作業は全部テクノロジーにやらせる、という方法が最も生産性が高いかもしれません。プロも試合は野球だと2時間、3時間ですが、準備に膨大な時間をかけています。食事も生活も気をつける。そして、グラウンドに出た瞬間に最高の集中力で戦いますね。それにすごく近づいてきている感じがします。

採用はすでにタレント争奪戦になっています。生産性が変数化すれば、生産性が高い人をみんな取りたいので、その争奪戦が活発です。

また、チーム力をどうやって高めるのか、というパフォーマンスマネジメントも欧米で流行りはじめています。タレントマネジメントは個人にフォーカスしていますが、パフォーマンスマネジメントはチームにフォーカスしてパフォーマンスを最大化します。マネジャーがチームにどう指示したらやる気を引き出せるのか。あとはチームメンバーの掛け合わせも重要です。プロスポーツのチームマネジメントにもテクノロジーが使われていますね。

最近のトレンドとして、ヒューマン・キャピタル・マネジメント(HCM)と財務会計システム(ERP)の連携が始まっています。全てのデータが連動し、誰がいくら利益を生み出しているかが明確になります。間接部門もビジネス部門への貢献の程度がわかる。一部企業では何十年も前から行われていますが、それをクラウドでできるようになりました。

生産性が見えるので、プロのように、例えばプロ野球選手の大谷翔平選手をFAで獲得したら、自分のチームの成績がどれだけ良くなって、観客動員数が増えてどれだけ儲かるのかがわかる。それで、大谷を何十億円で獲得します、というのがサラリーマンでもできるようになります。


岩本 隆(いわもと・たかし)◎東京大学工学部卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校工学・応用科学研究科Ph.D.。外資系企業、ドリームインキュベータなどを経て、2012年から慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。

文=成相通子

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