奈良とガウディから学ぶ「オリジナリティの見つけ方」

Photo by Hiroshi Homma / Yuki Naruse




「7つの風」を宿す伝統野菜の物語

三浦さん夫妻がお店を始めたきっかけは、奈良をオリジンとする野菜や、種を守ることだった。その理由を次のように話す。

「日本ってオカズが豊かな国なんです。そのおかずは野菜。この野菜たちは、七つの風を宿っている文化遺産でもあるんです。ひとつめの風は、野菜を育てる土、風土。二番目の風は、味、風味。その土地の気候風土が味に影響してきますよね。味を作るための農作業の過程で、風景が生まれてきます。そして、四季の移りゆく自然の中で培われた知恵(風習)があるんです。それを形にしたのが、生活工芸。これが5つ目の風、風物。それらを元に出来上がった生活文化のことを風俗といいます。これら6つの風によって生まれる心が、風情です」

「この七つの風すべてに関わってくるものが、伝統的な作物である、伝統野菜。ちなみに、伝統作物を受け継いでいる地域は、生涯現役率が高く、生物多様性があり、子どものいじめも少ないんですよ。私たちは、より多くの人に伝統野菜を知ってもらうことで、次の世代へと残していきたいと思っているんです」

彼らはオリジンの物語をしっかりと学び、それを丁寧に伝えていることでファンを獲得している。実際観光客は、それぞれの地でしか食べられないものを食べたい。食事がおいしいという前提で、このようなオリジンなる物語を伝えることが地域のオリジナリティになっている。

氷の食文化発祥の地でうまれる、かき氷カルチャー

夏になれば、朝の8:00には200枚の整理券が即完売するかき氷店がある。その人気ぶりはたびたびメディアに登場するが、まだできて2年しか経っていない。エスプーマという手法を使う大人気店「ほうせき箱」だ。



エスプーマとは、スペインで生まれた食材を泡状にする技術で、ほうせき箱ではヨーグルトのエスプーマがとくに人気が高い。奈良は日本における氷の食文化発祥の地なのだが、その歴史を再認識し広めていくことをきっかけに、かき氷が奈良でブームになっている。

一度に5杯? かき氷のはしご文化

ぼくが話しを聞いていて一番驚いたのが、一日に5杯も食べる人たちがいるということ。女性男性、関係なくだ。ほうせき箱で2杯くらい食べてから、その後に違うお店へと行くという。中でも、冬にくるお客さんは氷好きなストイックな方が多いので、一人で2杯食べるのは普通の光景だとか。

ほうせき箱は、冬に食べる氷こそ薦めている。なんでも、夏は牛乳の脂肪分が少なく泡状になりにくいため、ミルクをふんだんに使ったエスプーマは冬にしか作れない。他にも、柿をはじめとする奈良ならではの食材を使ったかき氷が多く作れる。だから夏に限らず、冬でもかき氷は人気があるのだ。
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文=成瀬勇輝

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