ビジネス

2018.01.30 10:00

資本主義は「損・得」から「幸・不幸」へ|糸井重里・篠田真貴子




「幸福」が尺度になった時代における2つの投資方法


岩佐;面白いですね。資本主義のあり方が変わってきているとは思いますか?

糸井:僕は、資本主義の尺度が「損・得」から「幸・不幸」になると思っているんです。

岩佐:損・得から幸・不幸?

糸井:どんなに定量的な評価が普及しても、幸せかどうかという基準は不滅だと思うんです。お見合いをするときに全ての条件をリストに書き出して、きっちり損得勘定で決める人はいないでしょう。いまは働き方改革も労働時間や給料といった数字の損得ばかりで語られていますが、その人にとって幸せかどうかを考えないといけませんよね。

岩佐:前職(編集部注:前職はDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集長)を辞めたときに損得で付き合っていた人たちが周りからいなくなったのを思い出しました(笑)。

糸井:個人も会社も同じなんじゃないでしょうか。損得ばかり考えていたらスペック勝負になってしまって、本当に面白いところが見えなくなってしまいます。

岩佐:篠田さんはどう思いますか?

篠田:社内で上場を目指すことを決めた4年前にどんな人に株主になって欲しいかを考えたのですが、損得の分析ができる株のプロや事業戦略をできる人とは別の軸もあるのかなと思いました。

ワイン好きの中にも、ソムリエのようなうんちくを楽しむ人もいれば、なんとなく近所のハウスワインが好きという人もいますよね。それと同じで、個人が株を買う時にもプロの手法と、それとは違った方法があるんじゃないでしょうか。その理由は「この会社の事業を面白いと思うから」でも、「なんとなく」でも構いません。長く続いている会社でも、趣味的な個人株主の数が多い会社もあります。

糸井:投資の考え方はたくさんありますよね。その分、いろんなタイプの株主がいる。その中でも僕にとっての理想の株主は、「何か手伝えることはない?」と言ってくれるような株主かもしれません。好きな会社が人材不足だったら、僕なら「知り合いを紹介しようか?」なんて言ってしまいますから。だけど、儲けたい人を否定するつもりもないんです。その会社のファンになって株を買う人もいれば、データをきっちり読んで株を買う人もいます。そのどちらも認められるのが、幸福を基準にした資本主義なのではないでしょうか。


糸井重里◎株式会社ほぼ日代表取締役社長。コピーライター、エッセイスト、作詞家として幅広く活躍する。1998年に開設したほぼ日刊イトイ新聞は、1日140万PVのアクセスを集める。

篠田真貴子◎株式会社ほぼ日最高財務責任者CFO。日本長期信用銀行(現・新生銀行)、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2008年より現職(当時社名・東京糸井重里事務所)。

編集=フォーブス ジャパン編集部 写真=松本昇大

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