急増するアマゾン「アレクサ対応PC」とマイクロソフトの憂鬱

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iOSと聞けばiPhoneをイメージするように、「アレクサ」はこれまでアマゾンエコーとセットで捉えられることが多かった。しかし、アレクサはSONOS製のスマートスピーカーやネストのサーモスタット、フィリップス製のスマート電球に搭載されるなど、独立したプロダクトとしての色合いを強めている。さらには、タワー型デスクトップやノートPCにも搭載され始めており、アマゾンとマイクロソフトの関係に影響を及ぼす可能性が出てきている。

先日、ラスベガスで開幕したCESでは、HPやASUS、エイサーなどのPCメーカーがアレクサ搭載PCを発表した。GeekWireによると、これらのハードウェアの多くはアレクサに対応するために機能をアップグレードしているという。

例えば、HPのデスクトップPC「Pavillion Wave」は、アレクサを呼び出すとLEDが点灯し、エイサーのノートPC「Spin 5」と「Switch 7 Black Edition」は、遠距離からでも音声コマンドを拾えるマイクを搭載している。

アレクサのPC業界への普及はアマゾンにとって朗報だが、マイクロソフトのコルタナと競合することになり、両社のパートナーシップに亀裂が生じかねない。アマゾンとマイクロソフトは昨年、双方のAIアシスタントを連携させると発表したが、まだ実現に至っていない。連携の詳細は明らかになっていないが、いずれかのAIアシスタントに固有のスキルが要求された場合、もう一方が従うことになるという。

ジェフ・ベゾスは、2017年8月のニューヨークタイムズのインタビューで、特定のタスクにおいてアレクサとコルタナが相互にコマンドを出すことができるようになると述べている。しかし、両社のパートナーシップは盤石には見えない。

アマゾンは昨年12月、アレクサをオフィスで利用できる「アレクサ・フォー・ビジネス(Alexa for Business )」をリリースした。エンタープライズ市場はマイクロソフトのコアビジネスであるにも関わらずだ。

現状は、コルタナがマイクロソフトオフィスのユーザーに対するサポートを提供しているのに対し、アレクサ・フォー・ビジネスはカンファレンスコールへの接続や会議室の予約、部屋のブラインドを閉めるといったタスクを実行する。

一見すみ分けができているように見えるが、一方がもう一方を打ち負かすことになることは十分考えられる。スキルの数でアレクサに大きな差をつけられ、多くのウィンドウズPCにアレクサが搭載されている現状は、マイクロソフトにとって憂鬱に違いない。

編集=上田裕資

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