「副業」の余白で社員が伸びる|家入流ゆるふわ経営論 第2回

旅するおむすび屋さん “むすんでひらいて”を手がける、CAMPFIREの菅本香菜さん

先日、CAMPFIREで働いている女の子がおむすび屋を始めました。店の名前は「旅するおむすび屋さん “むすんでひらいて”」。彼女は、CAMPFIREでプロジェクトを立ち上げ、資金を集めたのです。しかしIT企業に勤めながら、なぜおむすび屋をやろうと思ったのか。それにはこんな経緯がありました。

彼女の担当は地方創生事業で、いつも日本中を飛び回っています。仕事相手は地方で作物を作っている生産者や漁師、伝統工芸作家をはじめとするものづくりをしている方々。そういう人と実際に会い、現場ごとのニーズを汲み取って、個々に適したクラウドファンディングを立ち上げるのが彼女の仕事です。

そうして全国津々浦々、いろんな場所に出向いていると、自然と各地の美味しい食材と出会うわけです。そこでハッと気づいた。「この塩と、このお米と、この海苔を組み合わせて、おむすびを作ったら美味しいんじゃない?」。この閃きで生まれたのが、旅をしながらおむすびを作るというコンセプトのお店でした。

資金を元に食材を集め、自分の手で握って、売る。もはや飲食業です。「どうして地方創生事業の担当者が、おむすび屋を初めなくちゃいけないの?」と不思議に思われる方もいると思います。彼女が企画を立てて誰かをプロデュースするとか、地方に暮らす人にお店をすすめるとか、色々な方法がありそうですから。

でも、僕は思ったんです。彼女は、より地域に踏み込んだアプローチをするうえで、「おむすび屋を始める」という方法を選んだ。自分でおむすびを作ることが、地方創生に携わるうえでとても大切なことだったんじゃないかなと。

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実際、自分の店を運営して、全国各地の生産者さんとやり取りをする彼女はとても生き生きしていて、プロジェクトを薦める、管理するだけの立場じゃなくなっているんです。こういう社員の頑張りを、会社が応援しない理由はないと思うんです。

この話のなかでひとつ大きなポイントは、彼女が「正社員」だということでしょう。世間でいう「正社員」は、なかなかこうした活動は認められにくいようです。でも、CAMPFIREは基本的に副業完全OK。申請も要りません。入社時に約束したこと、求めているだけの仕事内容がきちんと果たされているのであれば、自分で時間をコントロールして副業ができる。

事実、おむすび屋さん以外にも、ミュージシャンのプロデュースを行う会社を持ちつつ働いてるスタッフもいれば、メジャーデビューしてるミュージシャンもいる。たまに社内で雑談していて「そんなことやってるんだ!」って僕のほうが驚かされるくらいです。

これまで、「“これからの働き方”について話をしてほしい」と依頼される機会が多くて、著書でも講演でも、何度もそういった話をしてきました。でももう、僕が話さなくても答えは出ていると思うんです。これからの日本は、少子高齢化による働き手不足で、経済が先細っていくことは目に見えている。シャープのような大企業すら体勢を崩してしまう今、もはや会社に身を預けることが安心、安全とはいえなくなってきています。
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文=家入一真

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