テクノロジー

2017.12.08 15:00

仮想通貨は人間の何をかえるのか?


改正資金決済法による事業登録制度(取引所制度)など、法令面も着々と整備されつつある。世界の中央銀行が法定仮想通貨の実現を模索する中で、日銀も重大な関心を寄せている。邦銀は円との交換性を前提にした仮想通貨の創設を目指す。

だが、国家レベル、さらにはグローバルレベルの決済システム適合性に関しては、必ずしも明確に答えを出しにくいのが現状ではないか。その分散的で直接民主的な決済システムは、金融国家主権と対立する側面を持つ。主権と個々の取引との折り合いをどうつけていくか、の難題でもある。技術革新の成果として、中央から束縛されない自律的なシステムが構築されていくのだろうか。

冒頭のSFの最後のくだりを思い浮かべた。

老人は、生きていることに疲れ果て、永い眠りを望んでいた。献身的なロボットたちも任務から解放してやりたい。彼は、ロボットたちの中央制御スイッチと自らの生命維持端末を手にした。「妻」を枕頭に呼び寄せ「本当に世話になったね。君も休んでね」と呟くと、まずロボット制御スイッチをオフにした。途端に妻もヘルパーロボットも、全てが停止した。安堵した彼は生命維持端末を切った。

辺りを闇と静寂が支配した。数瞬後、しかし、明かりが灯り、ロボットたちは何事もなかったように動き始めた。

ロボットたちはいつの間にか自律的に行動する術を獲得していたのだった。自分が彼らを制御できると思い込んでいた主人公だけが、永遠の眠りに入っていた。

文=川村雄介

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