英資産運用会社ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズが先ごろ発表した「ジャナス・ヘンダーソン・グローバル・ディビデンド・インデックス(Janus Henderson Global Dividend Index)」によれば、今年第3四半期に配当金が最も高額だった20社のうち、11社が以下をはじめとした同地域の企業だった。
中国移動(チャイナ・モバイル)、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC )、鴻海精密工業(通称フォックスコン)、香港地下鉄公社(MTRコーポレーション)、電能実業(パワーアセッツ・ホールディングス)
同期に支払われた配当金の金額だけを見れば、最も多かったのは依然として米国だ(合計1099億ドル、約12兆2300億円)。だが、増額が最も目立ったのは香港とオーストラリア、台湾(合計904億ドル)となっており、世界中のどの地域よりも大幅な増加を記録したのは、アジア太平洋地域だった。
当然ながら、業種によって異なる季節の影響や特別配当の有無などといった影響はある。ただし、それでも同地域で、配当金から利益を得られる機会が大幅に増していることは明らかだ。一方、いくらか驚きの結果とも言えるが、同地域に次いで配当金が増えた企業が多かったのは、英国だった。
注目すべき「中心」のシフト
中国を中心に、株主らにとって最も利益を得られる機会があるのはアジア太平洋地域だ。特に、2015年に米国を追い越した中国の電子商取引の市場規模は、すでにその2倍近くに達している。2021年には、8400億ドル規模にまで拡大すると予想されている(米国は同年、4850億ドル規模と推計)。
英運用会社ベイリー・ギフォードでパシフィック・ファンドの運用を担当するマネージャーは、アジア太平洋地域のテクノロジー企業は世界のどの地域の企業よりはるかに創意にあふれており、その「創造性と革新性の急激な上昇」はいまだ世界のその他の地域において過小評価されていると指摘する。中国で研究開発に費やされる金額は、すでに欧米を合わせた金額を上回っている。また、世界のスタートアップのうち、10社中4社が中国で創業された企業となっている。
その他の地域と同様にアジアでも、胸が高鳴るような成長は必ずしも、心躍るような高額の配当を意味するものではない。域内の株式会社には、古参企業も新興企業もある。だが、投資家らにとって勇気づけられるのは、配当金を支払うことが文化として確実に根付き始めているということだ。大規模な国営企業にその文化が浸透すれば、それは新興企業の間にも、徐々に広まっていくだろう。
一方、新たに発表された指標から分かるもう一つのことは、テクノロジー分野から目を離してはならないということだ。同分野の企業が支払った配当金の総額は2011年の第3四半期に1413億ドルだったのに対し、今年同期には3190億ドルに増えている。これに対し、石油・ガス、エネルギー、通信といった業種の企業は配当金を増やしていない。
最新の指標が示すのは、(企業の配当における中心的存在の)西洋から東洋への、そして欧米における古い業種から新しい業種への進歩的な変化だ。投資家たちは、こうしたトレンドの中で自分たちが正しい方向を見ていることを確実にしておく必要がある。