テレワークとは、ICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所の制約なく、柔軟に働く勤務形態。複数の分類があるが、雇用者が自宅で働く「在宅勤務」が最も利用されている。
テレワーク推進フォーラム(総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、民間組織、学識者等により構成)は2015年から11月を「テレワーク月間」と指定し、今年も関連セミナーや先駆的企業の表彰式等、テレワークに関するさまざまな活動を集中的に実施したばかりだ。
また、政府と東京都が連携し、2020年に東京五輪の開会式が開催される7月24日を「テレワーク・デイ」と設定。五輪期間中の交通渋滞の緩和に向け、通勤を控えてテレワークすることを推奨。政府、東京都と民間企業の900社・団体以上、労働者6万人以上が首都圏でテレワークを一斉実施した。
政府のテレワーク推進は本気なようだ。働き方改革の主流は労働時間の短縮だが、テレワークは場所を柔軟にできることが利点だ。また実施した企業では、労働生産性の向上や通勤時間の削減などの効果が出ている。「平成27年通信利用動向調査」によるとテレワーク導入率は企業全体で16.2%だが、大規模企業では44.9%。大手企業と中小企業の差が大きく表れている。
テレワークは1970年代前半、元NASAの科学者がカリフォルニアの大学でのプロジェクトで、「テクノロジーを使うことにより通勤しないで仕事ができるのか」を試みたことから始まった。
その発祥の国、米国で1990年代からテレワークを続けている先駆者がIBMだった。それが今年の5月、テレワークを廃止し、フルタイムで在宅勤務(毎日自宅で仕事)をしていた数千人の従業員に「出社か退社」を迫り大きな話題となった。これを知り筆者が思い出したのは、2013年にテレワークを禁じたヤフーだ。当時、「時代に逆行している」と批判の嵐を巻き起こしたが、その後、バンク・オブ・アメリカや家電量販店のベストバイ等の大手企業も廃止または縮小した。
その影響としてテレワーク導入が進まなくなるのではと懸念されたが、米国でのテレワーク導入率は2013年以降も増加しており、多くの組織にとって、課題よりも恩恵の方が多い働き方だ。