交通事故の死者数は米国の8倍
しかし、安全面での懸念は依然として大きい。グーグルは2009年以来、累計で300万マイルの自動運転のテスト走行を実施し、2016年には低速運行中のバスと接触する事故を起こしている。バイドゥは2013年に自動運転プロジェクトを開始して以来、これまで一度も事故を起こしていないと主張するが、累計走行距離の開示は拒んでいる。
一方でバイドゥは今年7月に70社以上の企業と、自動運転のデータをシェアする「アポロプロジェクト」の立ち上げを宣言。提携パートナーにはダイムラーやエヌビディアらも含まれている。バイドゥは自社の技術を提供する見返りに、企業から走行データの提供を受けるという。
バイドゥの自動運転部門のLi Zhenyuはフォーブスの取材に次のように述べた。「自動運転の実用化に向けて、ロボットに実際の走行データを与えることは非常に大切だ。そのために我々は外部企業とデータをシェアする試みを始動させた」
Liによると現状のテクノロジーは人間レベルには達していないという。中国の事故発生率は欧米よりもかなり高く、毎年26万人以上が交通事故で亡くなっている。これは米国の約8倍の数字だ。複雑な道路環境をロボットに完全に理解させるのはかなり困難なタスクであり、例えば、信号が赤の状況にも関わらず、交通整理の警官が「進め」と合図した場合、ロボットはその合図が理解できず、赤信号に従って停止してしまう場合もある。
「現状の自動運転車は、小さな子供のようなレベルだ。従うべきは信号よりも警官の指示なんだ、ということを繰り返し教えてやらないといけない」とLiは話した。
しかし、様々な問題があるにせよ、自動運転分野での中国の成長は確実だというのがアナリストらの見方だ。「中国政府は他の国に比べ、強力な意思決定力と実行力がある」と上海交通大学のYang Ming教授は述べる。「国内で築き上げたテクノロジーと政府の支援により、中国の自動運転の実用化が進むことは確実だ」とMing教授は話した。