25日には「大企業とベンチャーはWin-Winの関係を構築できるのか」と題したパネルディスカッションが行われ、Forbes JAPAN副編集長 兼 WEB編集長の谷本有香がモデレーターを務めた。パネリストは、東京急行電鉄、KDDI、富士通、野村ホールディングスから、大企業で新規事業開発のために奔走する4名が登壇。セッションでは、大企業がイノベーションを起こすために何が必要なのか、社内を巻き込むためにどうすれば良いかなど、熱い議論が交わされた。
谷本有香(以下、谷本):まずは一人ずつ、自社でどのような取り組みをされているのかお話しください。
加藤由将(以下、東急 加藤):我々はアクセラレータープログラムを運営しています。日本の大企業が同質化・均質化し、イノベーションが起こしづらい体制になっている現状において、東急としてどのような戦略を取るべきかを考えると、一番大きな問題になるのが人口減少です。沿線エリアでビジネスを展開しており、かつ東急グループのほとんどが労働集約型のサービサーであることを考えると、かなり危機的な状況です。
これらの背景から、外部からオープンイノベーションで新しいテクノロジーを取り込み、持続的な成長を目指していこうという文脈で、アクセラレーターという手法を取り入れました。
江幡智広(以下、KDDI 江幡):2000年頃から携帯電話でインターネットに接続できるようになったのは、通信会社にとって大きな変化のタイミングでした。インフラを引き、品質を担保することに関してはKDDIとしての知見がありましたが、回線の上に何かを乗せることについて、何もノウハウを持っていなかったんですね。最近はオープンイノベーションと呼ばれていますが、当時から我々は社外と連携しなければ新しい事業を作るのは難しいという発想を持っていました。
2000年代後半からは、ベンチャーキャピタリストが組成するファンドにリミテッドパートナーとして出資。2011年夏に「KDDI∞Labo」というベンチャーと事業協創する組織を立ち上げ、半年後にはベンチャーを資金面でも支援できるようファンドを創設しました。現在は50億円のファンドを2つ作り、計100億円のファンドで実際に事業を作ることにフォーカスして活動しています。
徳永奈緒美(以下、富士通 徳永):私は2000年からコーポレートスタッフ部門に異動し、社内ベンチャー制度やベンチャーへの投資事業を始め、一昨年からは「MetaArcベンチャープログラム」というベンチャー協創プログラムをスタートしました。ベンチャーと富士通が一緒に製品を開発するなど協業をゴールに定め、2年間で参加企業は60社、実際の契約に至ったのが20社という実績があります。
プログラムの特徴は2つあります。1つは検討期間を決めて集中的にやること。もう1つは協業という明確なゴールを認識し、全社で取り組むことです。
八木忠三郎(以下、野村HD 八木):私が所属している金融イノベーション推進支援室は昨年4月にできた部署です。「次世代ビジネスの発掘」「オープンイノベーションの推進」「日本のベンチャーエコシステムの発展をサポート」という3つをミッションに掲げています。
昨年からの活動を通じて、イノベーションが勝手に起こるのは難しいと感じたため、社内のビジネスコンテストやアクセラレータープログラムなど、4つの施策を実施しました。