しかし、習が掲げるプランは海外企業らに危機感を抱かせる内容でもあった。習が打ち出した方針は保護主義的な側面も強く、中国市場に期待を注ぐ海外企業を失望させる内容もある。アナリストからは今後の5年間で、米中の関係は冷え込むとの見方もあがった。
習は3時間半に及ぶ演説で自らが率いた開放政策を自賛し、今後も海外企業に市場を開き、参入障壁を引き下げていくとした。しかし、ここで気になるのは中国が自国のテクノロジーやイノベーションの育成に大きな重点を置く、中国ファーストの姿勢を強めている点だ。
アナリストらは2025年にかけて中国が航空機製造やバイオテクノロジー、半導体や新エネ車の分野で国産化を推進し、この分野の海外企業らは困難に直面すると見ている。
「中国は科学や技術領域での覇権を高めようとしている。海外企業への依存度を引き下げ、海外のテクノロジー企業に頼る姿勢を過去のものにしようとしている。今回の習の演説には繰り返しこのテーマが登場した」と米国外交問題評議会のデジタル政策担当のAdam Segalは述べた。
国内メーカーの保護姿勢は特に新エネルギー車の分野で顕著だ。全米商工会議所は、新エネ車を中国で販売する海外企業はモーター等の主要部品に、中国製の部品の採用を求められるケースが増えてくることを懸念している。
医薬品業界でも類似した状況は見られる。製薬分野では現地工場を立ち上げ、中国側と情報共有を積極的に行う企業らが、優先的に中国で許認可を得られるとのレポートをデロイトと米国通商代表部が発表している。
「最大の影響を被るのは中国側が重要とみなす、決済や金融のインフラ構築に関わる業界だ」と語るのはニューヨークのコンサルタント企業Eurasia GroupのMichael Hirsonだ。
中国政府はシスコやマイクロソフト等の企業に、国家の安全上の見地からソフトウェアのソースコードの開示を求めているが、企業らは開示情報が中国企業の手にわたり、競合製品が生み出されてしまう懸念を強めている。