谷本:また、若い世代の人は、頑張らない理由、上を目指さない理由みたいなものを見つけるのも上手な気がします。
尾原:そう。インターネットの副作用は、やらない理由を探せるところにある。それと、昔は、日常になかったものもなんでも見れてしまうのも問題です。
昔は、海外旅行にしても、「あっちに行けばこっちにないものがあるからまず見に行こう」というエネルギーがあった。今はインターネットによって行かなくても行った気になれる情報がとれてしまう。むしろ行かない理由を探せてしまいます。つまり、行かないとわからないからという外の力でエンジンをとにかく回して、行ったら異国だからこそ意外なことが喜ばれる中で自分の喜びを見つけられるっていうのは通用しない時代になったんです。
尾原:では、どうしたらいいのか。それは、小さくてもいいから「気づいたら自分がそれをやりまくってること」をやるしかないと思うのです。事業はついつい大きなイグニッションを最初から求めるけど、小さいものでいいんです。まず内側から火をつける。
そして、イグニッションをどうやって大きくしていくかを考えることが大事。それは仕事に関係していなくてもいいんです。オンオフ問わず、時間を忘れてやることはないかと探すことが大事なんです。
谷本:一人で踊り続けているうちに、仲間や共感者が現れるかもしれないということもありますものね。
尾原:まさにそう。デレク・シヴァーズのTEDトークに『how to make social movement』ってありますよね。
谷本:ひとりの半裸男性が踊っていて、一人がジョインすることでムーブメントが起こる、という動画を紹介しながら進めるトークですね。
尾原:そうです。これだけ物が溢れている時代、本当に楽しいものってお祭りしかない。だから、『天空の城ラピュタ』放映時にツイッター上で「バルス祭り」も盛り上がる。みんなでやっている熱狂感を感じたいからやるわけです。
確かに、最初に踊るやつは、孤独。でも、一緒に踊りたいと思われるだけの熱量を帯びているから、その馬鹿踊りにつられて二人目がくる。これが、祭りを欲する今の時代に、熱狂さを生むのかなと思っているんですよね。
谷本:一人目のダンサーの重要性もさることながら、実は二人目というのはとても重要で、単に頭数としてジョインするのではだめで、その人自身に信頼たる何かだったり、拡散力があって、そのムーブメントの大きさが変わったりする。だから、どんな人でもいいからフォロワーができればいいというわけでなく、インフルエンサーとしての二人目を惹きつけられるかというのが、最初に踊る人の熱と質によるところが大きいですよね。
尾原:確かに、二人目は重要ですよね。わりと誤解されがちなTEDでも同じことが言えます。
TEDはプレゼンテーションだと思われているけど、TEDのミッションは“ideas worth spreading”。それに、スピーチじゃなくて、トークなんです。たまたま、第一人者が話し手だっただけで、人が人にトークして、波紋のように広がって、それがムーブメントに変わって、世の中を変えていくよねっていう。だからTEDは実は話す人より、聞く人が話を受けてその波紋を広げられる人であることがすごく重要。だからスピーチじゃなくてトークなんです。
参加費用が高いと言われてますが、オーガナイザーはものすごい考えている。どういう参加者(オーディエンスとは言わない)をどうやって集めれば、このスピーカーの波紋を遠くに届けられるか。遠くに届くには、心に届かないといけない。色々なことを想像しながら、参加者を選んでいるんです。
つまり、二人目のダンサーになってくれる仲間を見つけていくことが非常に大事な時代なんだと思う。