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2017.09.30 12:30

イーサリアムを生んだ男が語る「仮想通貨と金融の未来」

Steve Heap / shutterstock

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中国政府は9月、ICOの禁止と仮想通貨取引所の閉鎖を発表し、仮想通貨業界を揺るがせた。しかし、イーサリアムの共同創設者、ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)は、中国の規制の影響は他国には波及しないと見ている。イーサリアムの時価総額は275億ドル(約3兆円)で、仮想通貨分野でビットコインに次ぐ世界第2位の規模を誇る。

「中国はICOからジャスティン・ビーバーまであらゆるものを禁止しており、他の政府が中国の規制を真似ようとは思わないだろう」とブテリンはソウルで行われたインタビューで述べた。「多くの中国人が暗号化に対応したメッセージアプリのテレグラムを使うなど、抜け道を見つけている」と彼は話す。

他の政府は、ブロックチェーンに対して中立的な立場を取り、特定の利用法に限定して規制を行っている。こうしたアプローチは比較的うまく機能しているという。

「中国以外では全ては良い方向に進んでいる。規制当局が自国でのブロックチェーンの利用方法に光らせることは重要であり、良い効果も与える」とブテリンは言う。

シンガポールやタイ、日本では仮想通貨とICOに対して、軽い規制を設ける形で合法化する動きが進んでいる。「普及の初期段階では、柔軟な対応が必要だ。悪質な行為は発見されるべきだ。それと同時に、過度な規制を設けず、誰でも参加可能なプラットフォームであるべきだ」

現在23歳のブテリンは、イーサリアムのコミュニティと交流するため先日ソウルを訪れた。韓国には世界最大規模のイーサリアム取引所があり、メッセンジャーアプリ最大手のカカオは、111種類の仮想通貨を取り扱う取引所を新たにオープンする予定だ。

ブテリンによると、アジアでは言語や文化的な障害でブロックチェーン技術に関する理解が遅れているが、人々の関心はかつてなく高まっているという。中国での規制強化にも関わらずアジアの仮想通貨市場はリバウンドし、韓国が取引量で中国を追い抜いた。

ブテリンによると、数年後にはイーサリアムはVisa並みの取引規模に対応することが可能になるという。イーサリアムのような仮想通貨が、銀行や不換紙幣(政府の信用で流通するお金)に完全に置き換わることはないが、2009年の経済危機で既存の金融システムの欠陥が浮き彫りになった。

金融システムの変化は避けられない

不換紙幣と仮想通貨は、経済においてそれぞれ重要な役割を担っている。不換紙幣は経済に安定をもたらす。一方、仮想通貨は銀行口座やクレジットカードを持っていなくても瞬時に決済を行うことを可能にする。

「急進的な推進論者に反論する余地は大いにあるが、仮想通貨をあたまから否定する人たちは世の中の動きに逆行している。既存の金融システムが、今後も大きな構造的変化を起こさずに存続し続けることはあり得ない」とブテリンは9月25日、ソウルの記者会見で述べた。

ブテリンは、仮想通貨エコノミーと他の経済圏との分離は、短期的には良いことだと考えている。その理由は、クリエイターたちが仮想通貨圏の参加者以外に損害を与えることを心配せず、イノベーションを起こす試みができるからだ。しかし、将来的に銀行が仮想通貨に関与するようになると、銀行による中央集権型の金融システムにブロックチェーンの枠組みは合わない可能性もある。

また、仮想通貨がメインストリーム化するまでには、マイニングのリソースや取引のキャパシティ、セキュリティなど多くの課題をクリアする必要がある。

「システムの規模をVisa並みに拡張することは可能だが、セキュリティが極めて脆弱になる。多くの人に利用してもらうためには、大規模なトランザクションに耐えられる拡張性を持つことと、セキュリティ対策を強化する必要がある」とブテリンは述べた。

編集=上田裕資

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