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文化放送プロデューサーㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

Photo by Buddhika Weerasinghe/Getty Images

朝、家を出たときに頬をなでる風の冷たさにふと季節の移り変わりを感じることがある。だが今回の風はそんな風情のあるものではなかった。

一夜明けると、解散風が凄まじい勢いで吹き荒れていた。新聞の一報からはじまった解散報道は、あっという間に誰にも止められない流れとなり、安倍首相が9月28日に招集された臨時国会の冒頭で衆議院の解散を表明した。

私もラジオ局の編成担当として各政党の政見放送を取りまとめることになった。政党や選挙管理委員会とのやり取りから放送内容の確認に至るまで、なにしろやらなければならないことがたくさんある。解散から投票日まで時間がないからといって、決してミスは許されない。病院の予約や休日の約束など個人的な予定はすべてキャンセルしなければならなくなった。いわばこの大きな流れに巻き込まれてしまったひとりだ。

ところで選挙に関する放送は誰のためにあるかといえば、これはもう明白に候補者ではなく有権者のためにある。有権者に投票をうながし選択の基礎となる事実を報道すること。これが放送局に求められる役割だ。つまり有権者の判断の材料になるように、選挙の争点などのポイントを整理して報道することは大切な仕事なのだ。だから公職選挙法でも「選挙に関する報道及び評論の自由」は保障されている。

政治家の中には「メディアの取り上げ方が偏っている」などと批判をする人もいるが、たとえば「子育て」について取り上げたときに、そうした政策に熱心でない政党の取り上げ方はどうしたって薄くならざるを得ない。有権者の関心にそって各党の主張を論評することはおおいにアリなのである(もちろんその際のスタンスは中立でなければならないけれど)。

ところが精一杯、客観的な報道に努めても、選挙結果にすべての人が満足することはない。「民意が反映されていない」というのは、選挙が終わった後に決まって耳にする声だ。

なぜすべての人が選挙結果に満足できないのだろう?

もしそんな疑問をあなたが抱いたとしたら、「決め方に問題があるのではないか」と考えてみてはどうだろう。そうすることで思わぬ視界がひらけるかもしれない。

実は「決め方」にはさまざまな種類がある。『決め方の経済学』坂井豊貴(ダイヤモンド社)は、そのことを教えてくれる有益な一冊だ。

私たちは物心がついた頃から「多数決」に慣れている。自分の記憶を辿ると、たぶん小学校1年生の頃に、クラスみんなで挙手をして何かを決めたのが最初だと思う。決め方は多数決が当たり前、多数決こそが民主主義の基本であると考えている人は多いのではないだろうか。

だが世の中には多数決ではうまく物事が決まらないこともある。

2000年のアメリカ大統領選挙は、民主党のアル・ゴアと共和党のジョージ・W・ブッシュ両候補の一騎打ちとみられた。事前の世論調査ではゴアが有力。だがここで思わぬ伏兵が現れる。社会活動家の弁護士ラルフ・ネーダーが「第三の候補」として出馬したのだ。ネーダーの主張や政策はゴアに近かった。その結果、ネーダーの票がゴアを食うかたちとなり、ブッシュは僅差で勝利をおさめたのである。ネーダーの全米での得票率はわずか3%にも満たなかったという。

もしゴアが勝っていたら? 大量破壊兵器があると強弁してイラクに侵攻することも、フセイン政権の残党たちがIS(イスラム国)を結成することも、各地で頻発するテロもなかったかもしれない……。歴史に「もし」はないが、ネーダーの出馬さえなければ、それらはみな「あり得たかもしれない未来」だったかもしれないのだ。

文=首藤淳哉

 

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