人、モノ、企業がつながると「オフィスワーク」はこう変わる

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メールの自動監視や精神状態の"見える化"など、働く現場でもIoT、AIの活用が進み、さまざまな情報が把握できるようになった。

人とモノ、人と機械、企業と企業がつながるコネクテッド・インダストリーズ。「オフィスワーク」を変える5つの最新事例を紹介する。


1. AIが電子メールを自動で監視|FRONTEO

「いくら頑張っても評価は低いまま。こんな仕事、さっさと切り上げて帰ろう」……こんな何の変哲もない友人宛のメールが、AIによって監視され、ブラックリスト入りしているかもしれない。

監査官の調査手法を学習した人工知能「KIBIT(キビット)」による、Eメールの自動監査システム「KIBIT Email Auditor」。同システムは、会社のリスクとなりうる文言が含まれたメールを自動で抽出する。これにより、企業はリスクを事前に把握でき、対策を講じることができる。実際、人材派遣会社での退職の予兆の発見に使われているという。

2. 音声の変化から心の状態を見える化|日立システムズ

問診・面談だけでは実態を掴みづらい、従業員の心の健康状態。社会課題にもなっている“こころの不調”を予防、早期発見すべく、日立システムズが開発しているのが「音声こころ分析サービス」だ。

これは声帯の変化(不随意反応)を分析し、心の健康状態を数値化するクラウドサービス。スマートフォンや固定電話、携帯電話などで録音した音声を分析して数値化し、15秒ほどで結果をPCやスマートフォンの画面に表示。数値の傾向によって、心の健康状態の変化をとらえ、うつ病をはじめとするメンタル疾患の予防や未病の早期発見に貢献してくれる。

3. IoTデータを誰もが、自由に|オムロン

オムロンは膨大なセンシングデータの中から利用ニーズと提供ニーズをつなげ、必要なデータを安全に流通させる特許技術を持つ企業として、ユーザーが必要なときに必要なセンシングデータを引き出すことのできる「センシングデータ流通市場」の創出を目指している。

同社が想定例の一つとして挙げているのが、公共インフラと民間のセンシングデータの組み合わせ。住宅設備や家電などを利用し、一家に1台設置した加速度計のデータを収集、解析する。それにより、今までは難しかった地震のメカニズムを解明するデータを提供し、社会問題の解決を図ろうとしている。

4. 行動データの分析で組織を活性化|日立製作所


日立製作所は家電製品の開発だけでなく、ウェアラブルセンサーを活用して組織を活性化するサービスも手がけている。

まず、従業員に名札型のウェアラブルセンサーを身につけてもらい、行動データやネットワーク(関係性)を計測、可視化。その結果を日立が開発した人工知能が分析し、組織を活性化するための具体的な施策を提案する、というものだ。

実際、日立グループ内の営業部門26部署、約600人を対象として実証実験を行ったところ、AIによる働き方のアドバイスが、組織活性度の向上に寄与することが確認されている。

5. センサーが持つデータを売買|エブリセンスジャパン

エブリセンスジャパンが手がける「EverySense」は、世界中のあらゆるセンサーが持つ情報(データ)と、事業開発や新サービス創出、学術研究に取り組む企業・研究機関が求める情報(希望条件)とのマッチングを行いデータの売買を仲介する、サーバーにデータを保有しないIoTデータ流通プラットフォーム。

さまざまな産業でデータの利活用を当たり前にし、IoTデバイスの普及を促進させることが期待される。 同プラットフォームは、IoTデバイスが生成する情報の構造のみを登録するだけで機種依存することなく、EverySenseとの接続が可能だ。

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文=新國翔大

この記事は 「Forbes JAPAN No.38 2017年9月号(2017/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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