売上8兆円の中国ファーウェイが悩む「米国市場の高い壁」

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今年で創立30周年を迎えた中国のファーウェイは、サムスンやアップルに次いで世界3位のスマートフォンメーカーとなり、欧州や米国の消費者らを魅了しようとしている。

ファーウェイのスマホは最新のiPhoneやGalaxyをライバルに見据え、テクノロジーやデザインに磨きをかけている。10月に発表される新モデル「Mate 10」は、究極のベゼルレススクリーンに3D顔認証機能を搭載し、iPhoneの10周年モデルに対抗する。

さらに、Mate 10にはファーウェイ傘下のHisilicon Technologiesが開発したKirin 970チップが採用され、カメラ性能ではGalaxy 8を上回る。Kirin 970に内蔵されたAIが撮影シーンを判別し、適切な露出やシャッタースピードを自動で調整するのだという。

しかし、現状ではファーウェイのスマホの利益率は競合に比べると著しく低い。ボストン本拠のコンサルタント企業、Strategy Analyticによると世界のスマートフォンが生み出す利益の91%はアップルに渡っている。

ただし、ファーウェイには別の収益源もある。通信事業者向けネットワーク事業の好調に支えられ、ファーウェイは2016年に総額740億ドル(8.1兆円)の売上高を記録した。4G通信ネットワークの導入に続き、ファーウェイは次世代の5Gネットワークの構築を主導するポジションを得ようとしている。

さらに、ファーウェイはマーケティング面でも巨額の投資を行い、ハリウッド女優のスカーレット・ヨハンソンやサッカー選手のリオネル・メッシを広告に起用。ワルシャワやヘルシンキ等の欧州の街角では、ファーウェイの広告が至るところに設置されている。

調査企業Canalysのデータでは、ファーウェイはフィンランドやイタリア、ポーランド、スペインといった国々で出荷台数ベースでアップルを追い抜き、2位のポジションとなった。また、ドイツでは3位、フランスでは4位に入っている。

背景にはファーウェイと欧州の通信キャリアとの深い結び付きがある。同社はフランスのオレンジやフィンランドのエリサといったキャリアに古くから通信機器を納入しており、そのチャネルを通じ、欧州でスマホを販売している。
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編集=上田裕資

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