英ベリスク・メープルクロフト(Verisk Maplecroft)が実施した「現代奴隷指標」(MSI)調査は、「法律の強固さ」「実施の有効性」「違反の深刻度」を基準として198か国・地域での現代奴隷リスクを評価するもので、まとめられるのは今年で2回目となる。
今年の調査では、移民の主要玄関口であるルーマニア、ギリシャ、イタリア、キプロス、ブルガリアの5か国が欧州で最もリスクが高いグループとなり、EUの20か国でリスクが増大した。
フォーブスも伝えた昨年の調査では、欧州初となる「現代奴隷法」を制定した英国が低リスクの国として評価された。だが、ここ1年で世界はより複雑化し、課題も増えている。ビジネスでのサプライチェーンの透明性も全く改善されないままだ。
英国とドイツの状況は昨年からわずかに悪化し、「低リスク」の基準をかろうじて上回り「中リスク」と評価された。英国でリスクが増加した背景として、増加する現代の奴隷や人身取引と闘う捜査当局の処理能力が逼迫(ひっぱく)していることがあるという。
現代の奴隷に関する近年の裁判では、英国でどのように現代の奴隷取引が根付き、大企業が知らぬ間に奴隷労働を使用しているかが明らかになっている。先週に英紙ガーディアンが掲載した記事では、英国で奴隷労働が広まった背景として「立場の弱い人々の流入」「労働のアウトソーシング(委託)による責任の拡散」「近隣住民の生活状況を把握できないコミュニティー」が挙げられた。
ベリスク・メープルクロフトの上級人権アナリストを務めるサム・ヘインズは、移民危機により欧州全土の企業のサプライチェーンで奴隷問題が発生するリスクが高まったと語る。「サプライヤーとその調達品のリスク評価を行う際に企業が注意すべき地域は、従来から調達先として人気の新興経済国のみではもはやなくなった」