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2017.08.11 11:30

富裕層が好んで「オペラ」にお金をつぎ込む理由

Igor Bulgarin / Shutterstock.com


しかし、オペラが最高の芸術だと思われている最大の理由は、見ていて贅沢で面白い娯楽であるうえに、文字通りの総合芸術で、芸術の素養を持てば持つほど深く理解をしていくことができるという側面があるからにほかなりません。
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詩篇である台本、さまざまな技法が詰め込まれた作曲手法、歌とともに高度な演技力も求められる歌手、音楽を担う指揮とオーケストラ、演出、美術、衣装、空間デザイン……そして劇場そのものの芸術的価値など、オペラにはありとあらゆる芸術の集合体。一度に1000人を超えるキャストやスタッフが動く上演も珍しくありません。

公演に際しては、作曲、台本、それに指揮者や出演者以外に、演出家、美術デザイナー、照明デザイナー、衣装デザイナーなども大きく取り上げられ、「今回の衣装デザイナーはだれか?」「舞台美術はどうか?」ということも話題になります。これはまさに、オペラが総合芸術であることの象徴といえるでしょう。

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イタリアオペラ界の最高峰とされるスカラ座(posztos / Shutterstock.com)
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さて、話をアメリカに戻すと、いまアメリカでは最もお金がかかるオペラ制作、新作オペラが花盛りです。その原動力になっている歌劇場の一つがセントルイス歌劇場。これまでにも多くの話題作を送り出してきたこの歌劇場が今年送り出すのが「An American Soldier」。中国系二世でアフガニスタンに従軍した兵士が自殺した、というアメリカで話題になった実話をもとに、愛国心や文化的アイデンティティについて深く切り込む作品です。

そして、その最も重要な女声の役(主人公の母親役)を務めるのが、ニューヨーク在住の日本人歌手、重松みかさんです。重松さんは、アメリカで日本人オペラ歌手が活躍する礎を作ったといっても過言ではないメゾソプラノの歌い手。日本では大阪音楽大学で教えています。

実は、日本人のオペラ歌手はアメリカだけではなく、ヨーロッパも含め世界で活躍しています。また歌い手に限らず、作曲家も世界に羽ばたいており、例えばハリウッド映画にもなった遠藤周作の「沈黙」は故松村禎三氏がオペラにしていて、高い評価を受けています。また来年3月には、フランス国立ラン歌劇場では故黛敏郎氏が作曲した「金閣寺」が上演、7月にドイツのシュツットガルド歌劇場が上演する新作オペラ「地震・夢」は細川俊夫氏に作曲が委嘱されています。

オペラをただ“外国の文化”として知るだけでなく、日本人の活躍と合わせた話ができると、世界のビジネスエリートとの会話もより深く、スマートなものとなるでしょう。

文=武井涼子

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