小暮:「アルニカ」は、エトロのシグニチャー的なシリーズですね。ペイズリー=カシミール柄は、創業者のジンモ・エトロがインドを旅しているときに出会ったカシミール紋様のショールに触発されて誕生した柄です。そもそもペイズリー柄は古代メソポタミアでは、ナツメヤシの種子を象徴し、渦を巻く葉が描かれ、終わりなき再生、永遠の命のシンボルになっていたそうですよ。
森岡:エトロのペイズリーは、奥行きと深みがある。しかもよく見ると色彩も豊か。それにこのトート、側面にはチェックが使われています。
小暮:ハンドルに付けたロケット型のキーリングもちょっと可愛らしいですね。
森岡:最近、他のメンズブランドでも“大人可愛い”路線が顕著ですが、エトロはその先駆けになったブランドだと断言できます。
小暮:そういえば、トートバッグというのも“大人可愛い”アイテムの代表では。
森岡:そうですね。昔はこのデザインのバッグは、海外の男性は絶対に持たなかったものです。トートは女性が持つものでしたからね。
小暮:でも日本では男性も早くからトートを日常的に使っていました。それを海外からきたデザイナーが見て、ランウェイで登場するようになった。日本の感覚の方が早かった(笑)。
森岡::このトートは中にポケットも多数あるので、ビジネスでも使えますね。ペイズリー柄自体は存在感もあるけれど、エトロの場合、洗練されているので、ジャケットスタイルなどに最適。逆にこのバッグから発想してみてもいいのでは。例えば、合わせるアイテムを極端にシンプルにするとか。休日ならば、デニムに白いシャツ、そしてこのトートを持てば、絶対に洒落て見えますよ。
小暮:主張があるのを最大限に利用するわけですね。それが“大人可愛い”バッグの大きな強みですし、センスの出しどころですね、きっと。
森岡 弘(左)◎『メンズクラブ』にてファッションエディターの修業を積んだ後、1996年に独立。株式会社グローブを設立し、広告、雑誌、タレント、文化人、政治家、実業家などのスタイリングを行う。ファッションを中心に活躍の場を広げ現在に至る。
小暮昌弘(右)◎1957年生まれ。埼玉県出身。法政大学卒業。1982年、株式会社婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。83年から『メンズクラブ』編集部へ。2006年から07年まで『メンズクラブ』編集長。09年よりフリーランスの編集者に。