ファッションディレクターの森岡 弘とベテラン編集者の小暮昌弘が「紳士淑女が持つべきアイテム」を語る連載。第5回は、イタリア製のトートバッグをピックアップ。
小暮昌弘(以下、小暮):森岡さんはずいぶんと早くからイタリアの老舗ブランド、エトロに注目されていましたね。
森岡 弘(以下、森岡):1980年代後半でしょうか。初めてミラノへ行ったときに、ブランドショップが並ぶモンテナポレオーネ通りにあったショップを何度も覗きましたね。
小暮:女性の間ではすでにブームでした。
森岡:あの頃って、メンズでもペイズリーのシャツを着るのがある意味トレンド。日本のブランドでも全面ペイズリー柄のシャツをつくっていました。
小暮:イタリアに行くのならば、ご本尊に行かねばとエトロに行ったわけですね。1990年にキーン・エトロがメンズ部門のクリエイティブ・ディレクターに就任すると、そのデザインはさらに加速していくわけですね。
森岡:そうですね。スーツの裏地にカラフルなペイズリーが使われていましたね。シャツの袖口のトリミングにもこの生地が使われていて、センスがよかった。
小暮:イタリア製だからつくりがいいのは当然ですが、エトロのメンズには、そこのウィットが香っていたわけですね。
森岡:その通りです。だから昔もいまも“遊び心”をキーワードにしたブランドを挙げるときに、エトロは絶対外せないんですよ。
小暮:でもミラノのショップの雰囲気は完全にクラシック。イタリアの伝統が感じられましたね。それでいてメンズの服は”遊び心”がある。そのギャップがあの時代、新鮮だったのですね。そういえば、2015年のミラノ万博のときには、イタリアの食材をテーマにしたコレクションを発表、最近でもキーンの関心は、さらにさらに、多彩な分野に広がっている感じですね。
森岡:でもいまも昔も変わらぬ感覚は、“大人可愛い”というテイストです。余裕で遊ぶ。ハズシが洒落ている。それがエトロです。
小暮:そんなエトロで森岡さんが選んだのが、ペイズリー柄のトートバッグですね。
森岡:1986年に誕生した「アルニカ」という丈夫な樹脂コーティング素材を使ったバッグですが、このデザインは新作です。