まずひとつは、AIに膨大な量のデータを学習・処理させ、そこから最適な“解”を導き出すという用途。言い換えれば、AIが人間によってプログラムされた、もしくは自ら生み出した基準を元に、ものごとの判断を自動化するというものだ。
この用途には、画像・映像解析、病状診断、AIアシスタントによる検索などが含まれるだろう。例えば、インフラ保全に用いられようとしているAIは、人間が行ってきた目視による点検作業を代替し、作業の効率化や安全性を確保するため実用化が検討されている。
「対象を見る」という文脈で言えば、監視カメラのシステムに組み込まれたAIも同じ使い方だ。こちらは、対象の特徴(顔情報など)や挙動(怪しい動きなど)をAIが判断し、人間に知らせる仕組みとなる。
一方、採用や弁護、経理業務、また金融分野における投資判断など、いわゆる「ホワイトカラー業務」を代替するために開発されているAIも、それまで蓄積されたデータを学習し、人間が適切な行動を選択できるようサポートするのが目的となる。がんや眼病などを診断する「医療用AI」も、選択をサポートするという意味で同じ用途の範疇と言えよう。
AIサービスのもうひとつの共通点に、「未来を予測する」というものもある。この種のAIは、主に製造業の現場で導入が進められようとしている。ミシュランやダイキンなどのメーカーは、製品をIoT化しデータを収集。それをAIシステムで解析し「故障予測」、ひいては「製品サポート」につなげるための試みを進めている。
そのように「ものごとの判断」と「未来予測」という用途で使われているAIに、第三の用途が浮上しつつある。それが「生成」という使い道だ。つまり、それまで学習してきたデータを元に、新たなデータを生み出すというものである。日本のAIおよびロボット研究の第一線で活躍する関係者は言う。
「近年トレンドとなり、実用化も始まっているディープラーニングは、主に分析や判断を自動化するという文脈で注目を集めていますが、その真価のひとつは“生成”にある。例えば、画像解析に用いられているディープラーニングは、データを学習し、人間がプログラムせずとも自ら判断基準を作り出します。その生成プロセスは、他にも応用することができるでしょう」