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2017.07.15

過去作の不評を乗り越えた映画「スパイダーマン」新作の舞台裏

Photo by Jerod Harris/Getty Images

スパイダーマンが帰ってきた。2012年公開のリブート(再始動作)「アメイジング・スーパーマン」とその続編「アメイジング・スパイダーマン2」を経て、やっとファンが安心して楽しめる作品が現れた。

2017年、原作コミックの出版社マーベルが製作した「スパイダーマン:ホームカミング」(8月11日、日本公開)によって、主人公ピーター・パーカーは正式に“マーベル・シネマティック・ユニバース”(様々なマーベル・コミック作品のヒーローたちが共存する同一の世界)の住人になったと言える。そして同作の大ヒットは「アメイジング・スパイダーマン2」の後味の悪さを払拭した。

「アメイジング・スパイダーマン2」の敗因の一つは、込み入ったストーリーに何人もの悪役を詰め込んだことだ。製作元のソニー・ピクチャーズには、多数のキャラクターを登場させることで独自のユニバースを築き、スピンオフを作る狙いがあったのだろう。しかしユニバースはそうすぐに形成できるものではない。

幸いにもマーク・ウェブ監督、アンドリュー・ガーフィールド主演の「アメイジング」シリーズは2作で打ち切りになった。ヒロインのグウェンの父親、ステイシー警部を演じたデニス・リアリーが2015年にトーク番組で明かした内容によると、予定されていた3作目はさらに荒唐無稽になる恐れがあった。なんとピーターが死者を生き返らせる薬品を開発するというのだ。

不評だった過去作の汚名を返上

1作目でピーターが手からクモの糸が出す装置を発明したり、コナーズ博士が腕を再生させる実験を行ったりするのは原作通りだが、いくらなんでも高校生の主人公が人間の蘇生技術を発明する展開は飛躍しすぎである。この展開はまた、2作目の貴重な感動場面であるグウェンの死を帳消しにするものだ。

「アメイジング」シリーズの続編とともに、スパイダーマンと敵対する犯罪組織「シニスター・シックス」の映画化を予定していたソニーは、グウェンだけでなくステイシー警部をもパーカーによって蘇らせ、シニスター・シックスの一員に加えるつもりだったのだろうか。

同社が弄んでいた「スパイダーマン」フランチャイズのアイデアはそれだけではない。パラレルワールドを舞台に、グウェンがクモに噛まれてスパイダーウーマンになる「スパイダー・グウェン」の製作も報じられた。

フランチャイズを拡大することで莫大な収益を得ようとするのは、他のスーパーヒーロー映画シリーズも同じだ。とはいえ、キャラクターの人気に頼っているだけではいい作品は生まれない。アイコニックなキャラクターも、脚本や演出次第でその輝きを失ってしまうことがある。最近では、子供から大人まで幅広い世代に認知されているジョーカーが、「スーサイド・スクワッド」では登場シーンが大幅にカットされたことで、中途半端なキャラクターになってしまった。

リブートによってキャラクターは何度も生まれ変わることができるが、それも観客が飽きるまでの話。「アイアンマン」シリーズの成功がなければ、またマーベル・スタジオが「スパイダーマン:ホームカミング」を作っていなければ、ソニーはスパイダーマンを殺した会社として記憶されていたかもしれない。そのような無残な終わり方には、スパイダーマンの宿敵ジョナ・ジェイムソンも嘆いたことだろう。

編集=海田恭子

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