仕事をするなかで部下や、ときに上司に対してフィードバックをする機会というのがあると思う。でもフィードバックが得意な人は少ない。私がみなさんに伝えたいのは、「恐れなき告白(Radical Candor)」をすることで、フィードバックをあげるのがすごく簡単になる、ということだ。
私が昔、上司に叱られた話をしよう。まだグーグルに入社したての頃、創業者ら経営陣の前でプレゼンする機会があった。当時、私はGoogle AdSense(広告配信サービス)のオンラインセールス&オペレーションの責任者だった。発表を終えたとき、私はプレゼンの大成功を確信した。AdSenseのユーザー数が信じられないくらい伸びていたからだ。
だが会議室を出ようとすると、上司のシェリル・サンドバーグが「一緒に部屋まで歩きましょう」と言った。嫌な予感がした。
シェリルは私のプレゼンのどこが良かったかを一通り述べ、こう言った。「あなた、自分で『えーっと』が口癖なのを自覚している?」
私は胸をなでおろした。些細な問題だったからだ。だが軽く受け流そうとする私に、シェリルはこう告げた。「あなたが3単語ごとに『えーっと』と言うのは、すごくバカに見えるわ」
よい叱り方の「2つの条件」
このことを他の人に話したら、「シェリルはいじわるだ」という人もいた。でも私は、シェリルが正直に話してくれて心から感謝している。
私はスピーチコーチのもとに通って、話し方を矯正することになった。そしてそれまで、自分の言語障害に気づかずに人前で長年プレゼンしてきたことに気づき、恥ずかしく思ったのだ。
この件がきっかけで、私はいろいろ考え始めた。なぜシェリルはほかの人ができないフィードバックを、効果的に、しかも自然にあげられるのか。
その理由は2つあると分析する。
まずシェリルは私だけでなく、みんなのことを気にかけるのが上手だ。私がニューヨークからカリフォルニアに引っ越してきたとき、誰も知り合いのいない私をみんなに紹介してくれた。と同時に、彼女はストレートにものを言う。相手と対決することを恐れないのだ。
私はどうすればシェリル流のフィードバックを他の人にも教えられるかと考え、下図のようなフレームワークを考案した。
図の縦軸が表すのは「思いやり(CarePersonally)」の強さ。社会に出ると、多くの人がプロフェッショナルとしてふるまおうとするあまり、自分の感情を押し殺すようになる。そして目の前の仕事を終わらせることを優先し、同僚たちのことまで気が回らなくなる。だから、まずは同僚たちを思いやることが大切だ。
一方、横軸は対決姿勢(Challenge directly)の強さを表す。あるいは相手に嫌われることをいとわない度胸、ともいえる。コリン・パウエル(元米国務長官)は「リーダーシップとは人を怒らせるのをためらわないこと」と言った。
なぜ、私たちは人を怒らせたくないのか。それは子供の頃に「優しい言葉を言えないなら何も言うな」と家庭で何度も教わってきたからだ。でも相手に正直に言うことは、道徳的な義務でもある。相手が成長するチャンスでもあるのだから。
この「思いやり」と「対決姿勢」を同時にもつこと(「恐れなき告白」)が、最善のフィードバックとなる。