カラニックCEOが休職を発表する直前、米紙ニューヨーク・タイムズの記事で紹介されていた識者コメントに、私は目を丸くした。同紙は企業のハラスメント問題を定期的に調査している労働法律事務所ハーシュフェルド・クレーマーのパートナー、スティーブン・ハーシュフェルドの話として、次のように指摘した。
「トップからの全面的な賛同なしの対応は、完全な時間の無駄だ。それが全くのまやかしだということがすでに従業員に知られている場合、こうした対応は会社の士気に一層の悪影響を与えかねない」
ハーシュフェルドの言う通り、倫理的な企業文化を醸成するには優れた人格を持つリーダーが必要だが、それだけでは不十分だ。ウーバーが抱えているような問題を避ける唯一の方法は、正直で責任感・勇気のある人を組織のあらゆる職位に配置することだ。つまり、人格者のみを雇用・昇進させ、残りは解雇することになる。
以下はこの主張に対して考えられる反論と、私からの回答だ。
<反論1>
たとえ全ての従業員がまともな人間でも、職場とリーダーシップの問題は完全になくならない。
<回答>
これは事実だが、人格を考慮した採用・昇進の目的は、顧客を攻撃する従業員や従業員を攻撃するリーダーを抱える「可能性を減少させる」ことだ。これだけで努力の価値はあるのではないだろうか?
<反論2>
そもそも人格で採用することなどできない。
<回答>
これは誤りだ。人格での採用は可能なだけでなく、必須でもある。私は、誠実な人物の採用手法について世界中のビジネスリーダーを2年間取材した。あらゆる職務の採用活動で、候補者が人徳のある人物かどうかを見分けるために使える質問はある。
例えば「これまでの経験で、相手に言いにくい真実を伝えなくてはならず、簡単ではなかったけれどもそれを実行し、良い結果につながったことはありますか」と聞けば、候補者の正直さと勇気の有無を見分けるのに役立つ。
病的な嘘つきもちろんいるが、人格評価を全く怠ってしまうと、ウーバーもあなたの会社も対処しきれないほどのリスクが生まれる。