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ライター、エディター

映画『ありがとう、トニ・エルドマン』のマーレン・アデ監督(左)昨年のカンヌにて(Getty Images)

現在、日本で公開中のドイツ映画『ありがとう、トニ・エルドマン』。

父と娘という普遍的なテーマに社会性を滲ませながら、「独創的」としか言いようのないストーリーで笑いを誘い、観る者の度肝を抜く。

本作が昨年のカンヌ国際映画祭でプレミア上映された際、ちょっとした“トニ・エルドマン フィーバー”が起こった。手加減なしの採点で知られる映画専門誌もこぞって高評価をつけ、「SCREEN INTERNATIONAL」では史上最高得点である3.7点(4点満点中)を記録。パルムドール獲得を予想する人も少なくなかったが、結果はまさかの無冠──。

その後も勢いは止まることなく、英仏の老舗映画雑誌が2016年のNo.01に選出。世界的に見ても「2016年を代表する一本」となった。監督のマーレン・アデが自らプロデューサーを務めたことや、彼女が若くして立ち上げた製作会社「komplizen film」にも注目が集まった。

受賞を逃したことへのジャーナリストたちの失望、カンヌ以降も上がり続ける世間の評価を考慮したのか、映画祭側は、マーレン・アデを今年のコンペティション部門の審査員に選出。同じく審査員のペドロ・アルモドバルやジェシカ・チャステインらと肩を並べた。

カンヌ映画祭はマーレン・アデを見捨てたりはしなかったのだ。それは、“自分たちが見つけた才能”という誇りがあるからにほかならない。


『ありがとう、トニ・エルドマン』はシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほかで公開中。同作はジャック・ニコルソン主演でハリウッドリメイクも決定している(Courtesy of Komplizen Film)


マーレン・アデは、前作『恋愛社会学のススメ』でも高い評価を受けており、ベルリン映画祭で銀熊賞を受賞している。だが、『ありがとう、トニ・エルドマン』がカンヌで大きな話題を呼び、翌年審査員も務めたことでベルリンの影は薄れ、“カンヌお墨付き”の印象が強まった。

彼女のように、“カンヌのお気に入り”の映画人と言えば、何人かが頭に浮かぶ。その筆頭は、カナダの若き天才、グザヴィエ・ドラン。2009年に『マイ・マザー』を監督週間に出品して以来、長編6作品のうち5作品がカンヌに選出されている。2015年には最年少でコンペティション部門の審査員を務めた。

今年でいえば、グランプリを受賞した『BPM』のロバン・カンピヨ監督も、脚本を手掛けたもう一つの作品『L’Atelier』が「ある視点」部門に選出されたとあって、カンヌとの相性は良さそうだ。批評家週間で高い評価を得たフランスの若き女性監督レア・ミシュスは、アルノー・デプレシャン監督の『イスマエルの亡霊(原題)』の共同脚本も手掛けた才女。これからの活躍にカンヌは注目しているはずだ。   

カンヌに選出される監督は、「いつも顔ぶれが変わらない」「またあの人か」と批判を浴びることも少なくない。だが、そこには一度目をつけた才能を簡単に手放して他の映画祭に取られるのだけは避けたい、という考えが見え隠れする。そうやって、“カンヌらしさ”はつくられていくのだ。

文=古谷ゆう子

 

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