──とても興味深いです。赤身の肉にも合わせられる日本酒、とおっしゃっていましたが、赤ワインとの違いとして、タンニンの有無があると思いますが、そのあたりはどう捉えていらっしゃいますか?
中田:基本的に、ワインと日本酒のペアリングの仕方は異なると思っています。ワインは料理の味を切るもの、日本酒は料理の味を倍増させるものです。味の深みは、タンニンである必要がなく、日本酒の持つコクで出していける。
どんなお酒でも、アルコールの度数の違いはあれど、喉ごしでアルコールを感じさせないバランス感をもつことが大事だと思っています。
──一部の高級ワイン人気の理由の一つは、数十年に渡って長期保管することで味の変化が楽しめることもあげられると思います。日本でも古酒が売られていたりしますが、エイジングについてはどう考えていらっしゃいますか?
中田:基本的に、今出しているNはフレッシュ感を楽しむ早飲みタイプですが、作り方によってはエイジングが可能な日本酒もあっていいと思っていますし、今開発中です。
──やすやすと色々なことをこなしていらっしゃるように見えますが、日本酒産業は、伝統産業。外側から変えていこうとされている中田さんからすると、ご苦労などはありますか?
中田:もちろん、私は自分が考える方向性が正しいと思ってやっていますが、色々な考えがありますから、それは誰かの正義ではないかもしれない。時には理解してもらえない場合もありますが、それは、私がどうこう言うことではないと思います。
むしろ考えるのは、周りのことでなく、自分自身のことです。具体的にいうと、時間の制約がある中で、できる限り多くの日本酒を飲むことです。自分が商品を知らなければ、説得力がありません。重要なのは、知らないことを知っていくということ。
そこにあるのは、好きなことを知りたいという気持ちだけです。これまで、全ての情熱を好きなことに使ってきています。こういった物事へのアプローチの仕方は、サッカー選手だった頃と変わりません。
──中田さんが情熱を傾ける日本酒の世界戦略。特に、アジアへの進出というのは、中田さんの中で、どんな位置付けになりますでしょうか?
中田:アジアは、最初の一歩であり、最大の一歩だと思っています。アジアは主食が米ですから、文化的にも日本に近いですし、旅行で日本に来る方も多く、和食や日本酒に対する理解が深い。中華や他のアジア料理にも日本酒が合うという考え方を理解してもらいやすいと思っています。
また、アジアの人口はこれからも増えていくでしょうし、国としての存在感も増していくと思っています。そういう意味でも、最大の一歩と捉えています。
──10年後、50年後、日本酒がどうなっていると良いと思われますか?
中田:今ワインがそうであるように、世界中で親しまれるようになるといいなと思っています。
世界に広まった時には、その地域に合わせた色々なバリエーションが出てくるでしょう。日本国外でも、日本酒の生産が始まっています。スパークリングワインがシャンパンの市場を広げたように、それは日本酒市場を拡大する視点において歓迎すべきことだと思います。
将来的には、世界のレストラン、どこに行っても、日本酒が置いてある、そんな風になっていれば素晴らしいですね。