肝臓は血液中に入ったあらゆるものをろ過するという重要な役割を果たす。また、肝臓が持つ機能は500近くに上り、これを上回る数の機能を持つ臓器は脳しかない。肝臓を大切にしなければならないのは、当然のことだろう。
肝臓病専門の国際科学誌「Journal of Hepatology」電子版に6月1日に発表された論文によれば、コーヒーには肝硬変や肝臓損傷のリスクを低下させる効果があると見られる。そして、お茶にも同様の働きがあると考えられている。
日常的にコーヒーを飲むことで肝組織が受ける損傷が減り、お茶とコーヒーの両方を飲むことで、肝臓が硬変する可能性が低下すると見られているという。さらに、摂取量が少ない場合も、これらの効果は確認されている。
世界の死因12位に挙げられるのが、慢性肝疾患だ。肝機能を良好に保つためにできることがあることなら、何でも知っておきたいところだろう。長期にわたる大量の不健康な食事、薬の服用、アルコールの摂取はいずれも、影響が蓄積されれば肝臓にとって大きな負担となる。そして、肝硬変や肝臓損傷につながる。
「肝疾患ない人」にも効果
コーヒーやお茶に含まれる化合物に肝組織を守る働きがあると見られることは、これまでにも複数の研究によって示されてきた。だが、いずれも最終的な結論が明確に示されたと言えるものではなかった。
今回の研究は、オランダ・ロッテルダム在住の45歳以上の男女およそ2400人を対象に行ったもの。血液検査と肝臓の健康状態を測定するための超音波検査に加え、コーヒーとお茶の摂取量をはじめとする食習慣について、詳細なアンケート調査を実施した。
研究チームは、「過去の複数の研究から、コーヒーやお茶には肝疾患の進行を妨げる効果があることが示されてきた。だが、今回の調査により、肝疾患と診断されていない人の間でも、同様の効果があることが初めて示された」と指摘している。
また、コーヒーを飲むことが脂肪肝(肝脂肪変性)の予防には大きな影響を及ぼしていないと見られることも明らかになった。
今回の研究結果は「朗報」ではあるものの、注意すべき点も幾つかある。被験者の年齢や居住地が限定的であること、対象者の人数が少なかったことだ。さらに、コーヒーとお茶に含まれる何が効果をもたらしているのかが特定されていない(いずれも抗酸化物質を豊富に含むが、その他にも100種類以上の化合物を含む)ということだ。
摂取されていたコーヒーやお茶の「濃さ」についても、詳細な分析は行われていない。健康のためにコーヒーとお茶を飲むべきだと明言できるようになるためには、さらなる研究が必要だ。
それでも、新たな研究結果は注目すべきものだ。(カフェインの過剰摂取がもたらす否定的な面を考慮しても)コーヒーとお茶の潜在的な利点が、また一つ増えたことになる。