大きな企業からムーブメントを起こしていく
──イノベーションを生むための考え方として、日本では「リーン・スタートアップ」や「デザイン・シンキング」を取り入れる企業も増えています。スプリントは、この2つの考え方とどのような違いがありますか?
ジェイク:リーン・スタートアップもデザイン・シンキングも素晴らしい考え方で、新しいアイデアを効率的に生み出すという点では共通しています。スプリントは、これら2つの考え方をより実践しやすくするプロセスの一つだと考えています。
開発の現場でよく耳にするのは、リーン・スタートアップやデザイン・シンキングを実践するのが難しいということ。スプリントは、開発の現場で実践しやすいように設計しています。
──スプリントは日本の大企業にこそ、有益なフレームワークだと思いました。ただし、日本の大企業、特に古い業界では新しいものを受け入れない、という風潮があります。どうすれば、旧態依然とした大企業でもスプリントが活用されると思いますか?
ジェイク:企業の経営層や幹部から、「スプリントっていう良いフレームワークがあるから使ってみてよ」と言われれば、あっという間に全社的に活用されると思います。ただし、現実はそう簡単ではありません。まずは小さなチームで試験的に活用していき、少しずつ価値を感じてもらいながら、全社的な活用につながっていくパターンが多いようです。
──アメリカの大企業での活用事例はありますか。
ジェイク:プルデンシャル生命保険やKLMオランダ航空など、大企業でスプリントを活用してくれるケースも増えています。事例は「Sprint Stories」というサイトにまとめています。
──現在、groovesでは日本国内の地方銀行とアライアンスを組み、優秀な人材を地方の企業に紹介する取り組みを進めています。実際に地方を訪れてみると、そこには優秀な人たちがたくさんいます。彼らがスプリントのことを知り、効率よく働いていけば、日本ももっと面白くなると思うのですが、どうやってITリテラシーがそれほど高くない人、テックエリートではない人たちに広めていけばいいでしょうか?
ジェイク:このフレームワークがアメリカで広まっていったのは、グーグルで始まったことが大きな要因だと思っています。世界的にも尊敬されていて、多くの人が関心を持っている会社が活用している。そしてそこから、GmailやGoogle Chromeといったサービスが生まれました。
日本の場合、ソフトバンクや任天堂など国内で尊敬されている会社がスプリントを導入し、成果を挙げていけば、普及していくでしょう。地方銀行は、その地方では有名な企業ですから、そこでの活用が進めば、地方にも広まっていくと思います。ぜひ、池見さん、布教活動をよろしくお願いします(笑)。