世界に目を向けてみると、エントリーシートの確認作業のみならず、採用プロセス全般を一元化するという動きが出ている。例えば、その代表格に米サンフランシスコに拠点を置くAI企業ミャー・システムズ(Mya Systems)がある。
同社は先月、人材採用向けのクラウド型AIチャットボット「Mya」のさらなる開発に1140万米ドルを充てることを発表したばかりだ。「Mya」は求職者追跡システム(ATS)を搭載しているほか、キャリアサイトと連携しており、オンライン評価や仕事のプロとのネットワーキングも可能。現在、β版で試験的に運用中なのだが、今年末までに利用者数は200万名に達するとも言われている。
ミャー・システムズのAIチャットボット「Mya」は、すでに有名企業を中心に起用されているが、従来の人手による採用方式に比べ、採用スピードが上がったと実感している企業は多いという。フェイスブック メッセンジャーやEメール、SMSを通じて現場の人事担当者と求職者がやり取りをし、それにより採用プロセスを最大75%自動化可能としている。あくまでもAI、人間による二重チェック体制が原則である。
こうしたAIチャットボットの導入に、人事担当者は比較的肯定的だ。5月18日付で公開されたキャリア・ビルダーの研究によると、人事担当者の55%が、5年後までにAIによる人事業務の自動化が実装され得ると考えているという。ちなみに、回答者の大半はAIを脅威と捉えていない。
以上の見解は、米世論調査会社ハリス・ポール(Harris Poll)が、民間企業の人事担当者231名を対象に実施したオンライン調査(実施期間:2017年2月16日〜3月9日)を通じて得られたものである。
ただ企業人事へのAIの本格導入には懸念もある。例えば、求職者を評価する側に認知的バイアスが働き、特定の人種に対して不利な結果がもたらされ得る事態だ。過去には、マイクロソフトのAIチャットボット「Tay」が、特定の人種に対しヘイトスピーチを行い問題となったが、人種差別的思想を持った人事担当者がAIを学習させることによって、採用試験が公正に行われなくなる可能性は否定できない。