コーチのビクター・ルイス最高経営責任者(CEO)は発表文で、ケイト・スペードは「卓越したブランドであり続ける力を持つと同時に、ミレニアル世代の間で高い人気を維持している」と同社が持つ強みを称賛した。
同CEOは、「今回の合意により、両社はニューヨークを拠点とする初の“モダン・ラグジュアリー”なライフスタイルブランドを築くことになる。世界各地で店舗を開設・運営し、国際市場でブランドを確立してきたコーチの経験によって、ほぼ手付かずのままのケイト・スペードの国際市場における潜在成長力を引き出すことができるだろう」と述べている。
一方、ケイト・スペードのクレイグ・リービットCEOは、「コーチ経営陣と協力し、ビジネス全般に関する彼らの専門知識を生かしていかれることを楽しみにしている。今後も開発を続け、長期的に顧客の忠誠心を築いていきたい。また、商品の幅を広げ、世界中の各地域での成長を実現していきたい」と語った。
さらに、両社の合併を歓迎しているのは当事者だけにとどまらないようだ。アナリストらも、楽観的な反応を示している。
小売業界を専門とする調査会社グローバルデータ・リテールのニール・サンダース社長は、ケイト・スペードには、提供する商品の幅を拡大していく大きな機会が与えられると指摘。コーチにはその前進を手助けできる体制が整っているとの見方を明らかにした。
「調達と流通の面において、コーチはケイト・スペードにさらなる価値をもたらすことができるだろう。また、デザインの面においても、新たなアイデアがもたらされることになるはずだ」
ただし、サンダースは次の点には注意が必要であるとも指摘する。
「合併については前向きに捉えているが、成功のためには今後も、両社の事業を切り離しておくことが必要だと考える・・・それぞれが明確に、個別のブランドであり続けることが必要だ。つまり、創造的思考と戦略の双方の面において、あまりにも密接に結びついたものになるべきではないということだ」
米銀大手ウェルズ・ファーゴのアナリストらも、同様に両社の合併を好意的に見ている。
「コーチは今後、インターネット販売で行ってきたフラッシュセールの実施規模を縮小し、卸売りについても体制の見直しを行っていくだろう。それらによって、一時的には8000万ドル近くの減収が予想される。だが、失われる利益は相乗効果によって相殺されるはずだ(つまり、より小規模で健全な販売の基盤によって、ケイト・スペードが同程度の利益をもたらすと考えられる)」という。
一方、コーウェン・アンド・カンパニーのオリバー・チェンは、コーチは新たな、そして現代的な大手高級ブランドとして自らを確立することになると指摘する。
「(今回の合併は)コーチを潜在的にLVMHやリシュモン、ケリングのポートフォリオと競合する、または補完する立場に向かわせる第一歩だと見ている」
戦略的な面から見ても、コーチがその包括性と親しみやすさというコンセプトに基づき、初の「ニューヨークを拠点とする“モダン・ラグジュアリー”ブランド」を目指すという点を歓迎しているという。