マクドナルドはさらに、HBSの履修課程で中心的役割を果たす教育手法である「事例研究」の問題点も指摘している。この手法では、学生が過去に起きたビジネス事案を研究し、最良の経営方法を評価する。これは「中心となるCEOを英雄として扱う傾向にあり(中略)CEOの名声追求と現代企業役員の間でのナルシシズム(自己陶酔)感覚を助長してきた」という。
マクドナルドはまた、HBSはリーダーシップをめぐる誤解を世間や学生に与えてきたとも言う。「MBA課程に入ったばかりの学生らは、君たちは世界を率いる未来のリーダーだと言われる。HBSに入学しただけで、未来のリーダーになれると信じ込んでいる」。しかしマクドナルドは、どんな学校のMBA課程であれ、入学や修了だけでは良いリーダーであることの証拠にはならず、それを証明するには実績をあげるしかないと指摘する。
彼はその証拠として、HBSに非常に批判的なマギル大学のヘンリー・ミンツバーグ教授(経営学)の著書を引用した。ミンツバーグによれば、大切なのはHBSからCEOが何人輩出されたかではなく、彼らがCEOとしてどのような業績を挙げたかだ。
ミンツバーグは、デイビット・ユーイングが1990年に発表した著書「Inside the Harvard Business School: Strategies and Lessons of America’s Leading School of Business」(邦題『ハーバード・ビジネス・スクールの経営教育』)の中で模範例とされたHBS卒業生のCEO計19人について、10年後の様子を調査。結果、10人が事業に失敗し、4人は業績に問題があり、成功しているのは5人だけだったことが判明した。