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2017.04.21

インド人「億万長者」が増える理由、貧困対策がビジネス・チャンスに

インド長者番付1位のムケシュ・アンバニ(Photo by Hindustan Times / gettyimages)

インドに行ったことがある人は誰もが、その貧しさを間の当たりにしただろう。最大の都市であるムンバイには、世界最大規模のスラム街がある。1人当たり国民所得は約12億人に上る人口が一因となり、主要新興市場4か国の中でも最低だ。

ただ、それでもインドでは2010年以降、ほぼ毎月1人とも言えるペースで「億万長者」が生み出されている。4月6日にフォーブス・インディアが伝えたところによれば、インド人富豪のうち資産10億ドル(約1089億円)以上を保有し、フォーブスのビリオネア・リストに名を連ねる人の数は、昨年の84人から現在、101人に増加している。

英国に拠点を置く経営コンサルタント、アマドフ・アンド・カンパニー(Ahmadoff & Company)のファクリ・アマドフ社長はこれに関連して、次のように述べている。

「インドの民間資本については、自力で富を築いた起業家ではなく“古くから富める者たち”の手にあるのだと考えられてきた。たが、調査結果によれば、保有資産10億ドル以上の富豪たちが持つ資産総額の約65%が、自ら財を成した起業家たちのものだ。さらに、この比率は2010年以降、変わらず安定している」

貧困対策がビジネス・チャンス

インド社会の基本的なニーズを理解すると同時に、どのような経済状況においても事業を運営することができる同国の起業家たちにとって、貧困をなくそうとする努力は新たなビジネス・チャンスになってきた。

過去7年の間には、ヘルスケアと医薬品部門で起業した10人がフォーブスのビリオネア・リストに加わった。この人数は、その他のどの業界よりも多くなっている。また、同じ期間中には小売業の創業者7人が、同様にリスト入りを実現した。

億万長者が続々と誕生する状況を生んできたのが、インドの急速な経済成長と富の継承だ。ここ1年ほどで、インド企業の株価は上昇。経営者らに再投資を行う資金的な余裕や、高額の買い物をする機会を与えた。

人数は減る可能性も

一方、インドの携帯電話最大手、バーティ・エアテルのスニル・バーティ・ミタル会長とその家族(純資産75億ドル、約8170億円)など、いくつかの富豪一族の間では、向こう数年の間にも資産の継承が行われると見込まれている。

アマドフ社長によれば、今後10年間に約650億ドル相当の資産が家族間で譲渡または贈与されると見られている。そして、贈与などを行った富豪のうち、ビリオネアの“地位”をその後も維持するのは半分ほどになる見通しだ。

ただし、「相続や譲渡は、家族にとっては複雑で大きな問題だが、650億ドルはインドのビリオネアたちが保有する資産総額の19%に過ぎない。新たに生みだされる富に比べれば、それほど重大な影響を及ぼすことはないだろう」という。

フォーブスの富豪リストによれば、インド人のビリオネアは2005年、36人だった。だが、その5年後には55人に増えた。さらに、それから6年の間に、10億ドル以上を保有する人はさらに46人増えた。2011年以降、毎年新たに8人前後がリストに加えられてきたことになる。

編集 = 木内涼子

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