たいていの人は“感動するような内容”を考えることに時間を使うだろう。しかし、あなたにとって長期的に有利になる結果を考えると、内容よりも“伝え方”を工夫をしたほうがいい。なぜなら私たちの脳は、内容に聞き入る以前に、退屈な話し方には耳を傾けなくなるからだ。
記憶が短期的なものになるか長期的に残るかは、感情がゆさぶられたかどうかで振り分けられる。聞いていて情熱を感じられなかったものは、そのときはなるほどと思っても、あっという間に忘れ去られてしまう。
情熱的に話すには
視聴者に情熱を感じてもらうのは、実はそんなに難しくない。なるべく多くの人に「自分はしっかり見られた」と感じてもらうことだ。それに、巧みな表現を並べるよりも苦手なりに一生懸命伝えようとしているほうが好まれる。聞き手が話し手を応援する気持ちになるからだ。
ではいかに情熱を伝えるか? 驚くほどシンプルなテクニックを紹介しよう。
まず、壇上に立ち正面を向いたら、観衆のいる席を中央・右・左の3ブロッックにわける。そして、左右どちらかのブロックの自分に近いところにいる一人を見て話しはじめる。見られた相手は「なぜいきなり私をじっと見るのか?」と思うが、悪い気はしない。たいていは自分が選ばれた気分になる。そして、話の切れ目で逆のブロックの中の一人を見て同じように話す。
さらにもう一度、最初に見ていたブロックに目線を戻し、先ほど見つめた人より少し自分から離れた人を見る。逆側も同じだ。これを繰り返して、自分の近くにいた人から、だんだんと見る視聴者の領域を広げていく。後ろの方まで見渡せたら、視線を送る人をまた自分に近い人に戻す。
視線を休ませたいときは、顏を正面にして全体を見渡しながら話す。これで、集まっている人はまんべんなく「見られた」と感じる。視線を動かすのに伴って話にテンポやリズムも出るので、スピーチも歯切れよく聞こえる。
視線は「カット割り」
こうして視線を移動させていくと、それぞれの視聴者が話し手に見られていると感じるだけではなく、実は話にも集中しやすい。
私たちが何人か集まっているときを想像してみよう。自分に目が向けられているときは、相手の目から視線を離しづらいので緊張関係になる。しかし、話し手が違う人を見ているときは、癖やファッションまで観察していて、その人を思い出す手助けとなる印象を記憶している。
テレビの収録スタジオでも、カメラは3台配置するのが基本だ。中央のカメラで全体を録り、左右のカメラで喋っている人や聞いている人、あるいは観衆などのリアクションを撮る。つまり、私たちの視線は「カット割り」された話し方を見るのに慣れているのだ。
マイクの注意
上記の通りシンプルではあるが、マイクの位置には注意は気をつけたい。スタンドマイクのときは、スピーチを始める前にスタンドにさしたままにするのか、手に持ちかえるのかを決める。胸元などにはさむピンマイクのときは、顔(頭)だけ左右にふるとマイクが離れて声が入らないので、上半身ごと動かすように気をつけよう。
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