学生による「手作りFIマシンコンテスト」が切り拓く未来

米国の「Formula SAE」の写真。学生が作ったレースカーを検査している。 (Photo by John B. Carnett/Bonnier Corporation via Getty Images)

F1マシンには、物理や材料工学、数学、航空力学、化学、コンピュータサイエンスなど様々な最先端技術が凝縮されている。数百万ドルもの資金が投入され、開発された技術は他の業種に応用される。それだけに、研究者や技術者を目指す学生にとって、F1マシンの開発ほど実践的な学習の場はないと言えるだろう。

「Formula Student」は、まさにそうした機会を学生に提供するコンテストだ。Formula Studentは1998年に始まった競技会で、様々な国の学生たちがF1マシンを自らの手で作って性能を競い合う。ロンドンに本拠を置く「Institution of Mechanical Engineers」がスポンサーとなっており、7月には世界25か国から117チームが参加して、イギリスのシルバーストン・サーキットで開催される予定だ。

Formula Student以外にも、「Formula Student Germany」や「Formula Student Spain」、米国の「Formula SAE」などが毎年開催されている。複数のイベントに参加する大学も多い。オランダのデルフト工科大学の学生による「Team Delft」もそうしたチームの一つだ。Team Delftには17か国から70名の学生が集まり、11名のコアメンバーを中心に活動している。

「学生たちは自分たちでゴールを設定し、リスクとリターンを考慮して意思決定を行っている。授業では決して学べない実践的な訓練で、教育面での効果は非常に大きい」とチームマネジャーのPietro Aresoは話す。

競技はスピードだけを競うものではなく、数日をかけて製造コストやデザイン、加速性能、効率性、耐久性などが評価される。学生たちのプレゼンテーション能力も評価対象に含まれる。

Team Delftは、ダッソー・システムズ(Dassault Systemes)が開発した「CATIA」というソフトウェアを使って車体のデザインを行っている。CATIAは、70名のメンバーたちが協調しながらデザインをするのに最適なソフトウェアだ。

Foucherによると、ダッソーは学生たちに可能な限りの技術協力をしており、チームに提供しているソフトウェアは、一般顧客向けのものよりもハイスペックで高価なものだという。

2.2秒で時速100kmまで加速する車も

「我々のプロジェクトは、組み立てる部品が3000点を超える非常に複雑なものだ。大勢のメンバーが共同作業をする上で、ダッソーのクラウドプラットフォームが非常に有効だ」とTeam Delftでチーフエンジニアを務めるJonas Holtermannは言う。

Team Delftには、異なる専門性を持つ学生たちが集まっているため、創造性溢れるアイデアが数多く生まれるという。

「航空力学を学ぶ者もいれば、電気工学を学ぶ者もいて、彼らが一緒に作業をする姿を見るのはとても興味深い」とFoucherは言う。Team Delftは昨年「DUT 16」というEVのレーシングカーを完成させた。このマシンは、わずか2.2秒で時速100kmまで加速し、スペインで開催されたFormula Studentで1位を獲得した。

彼らはこの成功に満足することなく、夏に開催される競技会に向けて新マシンの開発に全力で取り組んでいる。新しい技術を学ぶ意欲だけでなく、スリルも彼らを突き動かす原動力になっている。

「我々は現在、最大Gが3Gに達するマシンを開発中だ。加速時に受ける、胸を蹴られたような衝撃は、人生で最高の体験だ」とHoltermannは話す。

編集=上田裕資

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