「世界の工場」で復権目指す中国 ベトナムの追撃に対抗姿勢

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中国はかつて世界の工場だった。2011年には米国を抜き、世界最大の製造品生産国になった。工場は所得水準を上げるエンジンになり、中国の国民1人当たりのGDPは2013年までの10年間で倍増した。だが、中国は経済成長や環境のサステナビリティを確保するため、2011年ごろから国内消費やサービスセクターへの投資を重視するようになった。

そして中国は今、世界の工場のポジションを取り戻そうとしている。この動きは、中国の最大のライバルとなったベトナムに対抗するものだ。

政府系シンクタンクの中国国際経済交流センターによると、中国への海外直接投資は今年15%増加し、伸び率は前年を4.1%上回る見込みだ。海外資本への開放政策と、海外からの投資手続きの迅速化が、直接投資の伸びにつながったという。中国の英字メディアのチャイナデイリーは「新材料、新技術分野が投資の増大をけん引している」と報道した。

中国は資本流出を食い止める必要があるが、資本流出の多くは、自国を競争過多で制約が多すぎると考えている中国企業によるものだ。資本流出は2015年に1兆ドル(約114兆円)に達し、2016年もさほど変わらないとみられている。シンガポールのムーディーズソブリンのマリー・ディロンは「FDI(直接投資)流入額からFDI流出額を差し引いた額は、この2年間マイナスが続き、外貨準備高を減らしている」と述べた。

チャイナデイリーによると、昨年の海外からの対中投資は1180億ドル(約13兆5000万円)で、中国のGDPの2%にも及ばない。一方、ベトナムへの海外直接投資額のGDP比率は中国、インド、インドネシアを上回り6%で、無名の家具メーカーからフォックスコンやサムスン電子といった企業がベトナムに投資している。世界の工場として存在感を高めるベトナムは、年間6%近い経済成長を実現している。

エレクトロニクス分野で急伸のベトナム

ベトナムはこれまで衣類や車の部品製造など、低付加価値の作業を担ってきたのに対し、中国はPCのような高付加価値製品の製造を担ってきた。しかし、ベトナムもこの5年で電子製品の製造拠点に変貌しつつある。

米シンクタンクで中国ビジネスが専門のスコット・ケネディは「多国籍企業は昔のように中国への投資意欲を持っておらず、投資を他の場所に移そうとしている」と指摘した。

世界の工場のポジションの復権を目指す中国に相対し、ベトナムの動きはより活発化するかもしれない。ホーチミン市在住のコンサルタントは「現状ではベトナムが誘致しているのは、製造バリューチェーンの下流にある業種だ。つまり、ベトナムの成長はまだこれからだ」と述べた。

編集=上田裕資

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