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フリーランスライター

写真=岡田晃奈

三井悠加が浮世絵と出合ったのは9年前。アーティストのコンサートグッズの企画をしていた三井は、ある版元から、浮世絵を使ったグッズの販売を持ちかけられた。

「そのとき初めて本物の浮世絵を見て、美しい色使いや線を使った繊細な表現に強烈な魅力を感じました」 

すぐにビジネスには結び付けられなかったが、その後、個人的に美術館に足を運んだり、国際浮世絵学会常任理事の新藤茂に師事したりしながら浮世絵への理解を深めた。

転機は、29歳で語学とビジネスの勉強を兼ねてLAへ留学したとき。語学学校で母国の文化を英語で発表する機会があり、そこで浮世絵の話をすると、学生たちが予想以上に反応してくれたのだ。すぐにLAから浮世絵の版元へ電話をかけた。

「浮世絵を海外に出しましょう!浮世絵の価値を高めてくれるのは、日本ではなく海外です」

そして三井は、オリジナルの浮世絵をつくることを思いつく。

「浮世は“現代”を意味する。江戸時代の絵師が人気歌舞伎役者を描いたように、いまのスターをモデルに平成の浮世絵を描けないかと思いました」

偶然の出会いが重なってトントン拍子に話が進み、いきなりアメリカのロックバンド・KISSとのコラボレーションが決まった。親日家である彼らは、「Wonderful!」と二つ返事で承諾してくれたのだ。

そこで思わぬ障壁にぶつかる。職人がいないのだ。浮世絵の制作には、絵を描く絵師、木版画を彫る彫師、印刷する摺師の3人の職人が必要だ。しかし、浮世絵そのものが衰退しているので、かろうじて彫師と摺師はいたが、絵師が見つからなかった。

「例えば西洋画は陰影で立体を作り、浮世絵は線1本で立体感を出す。浮世絵風の絵を描くイラストレーターさんはいますが、このような浮世絵の様式美を再現できる人はほぼ皆無でした。やっとのことで、6代目歌川豊国のもとで修業した石川真澄さんを見つけ出しました」

2015年からアメリカのギャラリーを中心に浮世絵の展示・販売を行い、16年7月にはフランス進出を果たした。アメリカではKISSへの関心が先行し、浮世絵自体には「なぜこのポスターが10万円もするんだ!」と驚かれた。一方、フランスでは19世紀のジャポニスムの影響がいまも残り、「江戸時代に廃れたと思ったが、いまも新しい作品がつくられていたのか」と感動してくれた。今後はドイツなど、ヨーロッパへの展開を強化する予定だ。

「浮世絵職人の発掘・育成しながら、各国のレジェンドを題材に浮世絵を製作していきたい」。いま、江戸文化が再興されようとしている。


三井悠加◎1982年生まれ。ジュエリーデザインの専門学校を卒業後、2004年、父親が代表を務める三井エージェンシーに入社。歌手・夏川りみのマネジメント、コンサートグッズの企画、製作等を行う。14年5月、三井エージェンシーインターナショナルをロサンゼルスに設立、浮世絵プロジェクトを立ち上げる。

文=吉田彩乃

 

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