テック系企業と個人投資家をマッチングするビジネスは盛況だが、そこに豊富な資金を持つセレブを招き入れようという考えだ。
ユニコーン企業の従業員がIPOを待ちきれない場合、保有する株式をセカンダリーマーケット(流通市場)で売り出すことがある。ここへの投資は個人投資家にとって、大儲けが期待できるチャンスだ。
「顧客はシリコンバレーの有望企業に特別にアクセスできる機会を得られるのです」と、このファンドを主催するラショーン・ウィリアムス(Rashaun Williams)は言う。彼はManhattan Venture Partnersの支援を受け、MVPファンドを立ち上げた。「毎月発表するリストには将来有望な企業が名を連ねています。顧客はその企業に即座にアクセスできるのです」
同ファンドは1億ドル以上の資金を用意し、12のユニコーン株をまとめた商品を販売する。既に元NBA選手のエルトン・ブランドやパトリック・ユーイング、現役NBA選手のドワイト・ハワードなどのアスリートが、10万ドル~100万ドルの資金を投じている。
ウィリアムスはテック系企業とセレブを結び付けてきた実績を持ち、ここ数年で配車サービスのリフトやウェアラブル企業のJawboneなどに30人以上を紹介したという。投資先の候補には寝具ブランドのCasperやドロップボックス、キャリアスクールのGeneral Assembly、クラウドファンディングサイトのTilt等の名もあがっている。
マイケル・ジョーダンの関係者も出資
NFLのテネシー・タイタンズのデリック・モーガンもMVPファンドに出資した一人だ。「このファンドを通じ、出資できる企業の価値は目を見張るものがある」とモーガンは言う。「次のウーバーやスナップチャットがここから出現するかもしれない」
ウィリアムスは顧客から友人を紹介してもらい、新たな出資者を増やしている。かつてマイケル・ジョーダンのエージェントを務めたデビッド・フォークも出資者に加わった。
「プロアスリートたちは、スタートアップとの交流を楽しみつつ投資を行っています。あるクライアントは誕生日にイーロン・マスクに会いたいと言ってきました。彼らにとって有名企業の幹部と会えるのは楽しみの1つなのです」
有名人が投資で成功した例としては俳優のアシュトン・カッチャーとマドンナのマネージャーのガイ・オセアリーらが、エアビーアンドビー等の企業に投資し大成功を収めた事例がある。しかし、「投資はその道のプロに任せるべきです」とウィリアムスは言う。
「セレブが立ち上げたファンドが失敗すれば、名声に傷がつくことになります。そのリスクをとるだけの結果が生み出せるかどうかは疑問です」
それに対し、MVPファンドでリスクをとるのは、ファンドを主催する自分なのだとウィリアムスは言う。「私は過去2年で20億ドルのセカンダリーマーケット取引を扱ってきました。その実績をもとにセレブと株の売り手をつなげていきます」